第99話 約束
「ゆりか、今日の夜も来れば?キッシュ作るけど。昨日約束したからね。」
すてきな朝食をいただきながら、成田さんに提案されました。
「今日、ですか・・・?でも、成田さんもお仕事忙しいんじゃないですか?その上お料理までされるんですか?」
確かに前日、成田さんの作ったキッシュを食べたいと伝えましたが、そんなに早いタイミングかと驚きました。
「大丈夫。ゆりかが来るなら早めに帰るから。ゆりかは忙しいの?」
何気ない様子で言われましたが、こちらは感激しすぎてしまい、心舞い上がっていました。この日は英語教室の仕事のみで、カフェの教室はありませんでした。
「いえ・・・職場の終わる時間は遅くないです。でも一度自宅へ戻ってから来てもいいですか?」
英語教室の勤務後すぐにでも来たい気持ちでしたが、前日と同じ服なことも気にかかっていました。
「そう。何時頃になりそう?」
「そうですね・・・7時から7時半頃になると思います。遅いですか?」
「大丈夫だよ。今日も泊まっていくよね?」
何気なく尋ねられ、どきりとしました。
「えーと・・・いいんでしょうか?そんな、連続してしまって・・・」
「ゆりかが良ければ何日でも構わないよ。」
「成田さん、安うけ合いしない方がいいですよ?居心地良すぎて居座ってしまいそうなので。」
「本当に?そうしてみる?」
意外と乗り気そうなので内心焦りました。
「いえ、現実的にはなにかと不便もあるでしょうから、ほどほどにしますね。でも本当に、成田さんのお家は心地よいです・・・スポーツジムも近くて、良いお店もいろいろあるでしょうし。」
広いマンションというだけで素敵でしたが、さらに中心部で、生活するには憧れるような界隈でした。
「そういえば、私とゆりかがこうなったこと、うちの社員たちには言わないでいて欲しいんだけど・・・だめかな。」
ふと真顔になって成田さんが言いました。いろいろ思うところがあるでしょうし、その方が良いのだろうと思いました。
「あの、それは私も言いにくいですから・・・お互い、秘密でということで良いんじゃないですか?来週、どんな顔をして成田さんの会社へ行けば良いのか、正直ちょっと恥ずかしいです・・・」
そんなことを言いつつ、かつては職場恋愛のようなことをしていたものですが、今回の状況もまた照れくさいのでした。
「そうだね。まあ私はゆりかが会社へ来ても、英語には参加したりしなかったりだから、今まで通り気楽にしてくれればいいよ。でもゆりかが来るのは楽しみにしているよ。」
成田さんに見つめられると体中の細胞が浮き立つような心地がしました。彼のような人から心を向けられるなど、やはりまだ信じられない気持ちでした。
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