第96話 目覚め

 至福の時間でした。好きになった男性が私に触れ、私に口づけし愛撫していました。ベッドサイドの小さな照明が柔らかな光で空間を照らしていました。彼は私の下着を脱がせ、すべてがさらされました。


 急激な変化にのみこまれ、まだ夢かと疑うほど現実感は乏しいのに、身体は熱く目覚めていました。彼の激しい愛撫に狂い、身をよじりました。執拗なまでに何度も口づけを与えられ、身も心も快感にふるえこらえようもなく叫びが漏れ出しました。


 気持ちいい・・・


 なぜ遠ざかっていたのだろう。こんなに心地よいことだったのに。何をずっと怖れていたのだろう?


 初めて触れ合った成田さんは狂おしいほどに情熱的で圧倒されていました。触れられ、与えられるほど、私は歓びに浸っていました。うめき、弾み、焦がれた部分は濡れていました。私は彼を促しました。


 彼の指が私の中へ入り込み、私を感じさせていました。容赦なく押し寄せる快感に溺れそうになりつつも、早く彼にも感じて欲しいと願いました。成田さんも・・・何度も私は口走り、彼を求めました。


 待ち望んだそのときは微かな痛みをともない、まだ体がぎこちなく彼になじんでいないのかと思いました。彼に腕を絡ませ、どこか奇妙で慣れないときも私はよろこんでいました。もっと抱きしめたい、もっとひとつになりたいと願いました。


 私は人を好きになってもいい。


 彼を好きになってもいい。


 久しく私を捉えていた薄曇りのような眠りから、はっきりと目覚めた気がしました。


 愛し合うときを、私はもう手離さなくてもよい。惹かれ合う気持ちを、もうごまかさなくてもよい。不思議な磁力で惹きつけてくるこの人を求めてかまわないのだと。


 そう自分へと告げていました。

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