第94話 成田さんの家

 マンションのエントランスを通り、エレベーターに乗り、言われるままについてゆきました。玄関のドアも通り、成田さんのお家に着きました。


「お邪魔します・・・素敵なところですね・・・」


 マンションへお邪魔するのは珍しく興味深いことでした。成田さんのイメージを裏切らず部屋は綺麗に片付けられ、家具やインテリアは落ち着いた色合いで好ましい空間でした。リビングは広く、他にもお部屋がいくつかあるようでした。


「どうぞ、座って。お茶でも飲む?」


 成田さんはリビングから続くキッチンへ向かい、冷蔵庫からお茶を出してグラスに入れてくれました。居間には心地よさげな大きなソファがあり、腰をかけました。体調は回復していたものの、背もたれの高いソファによりかかっていると気持ちがよく、ひどく眠くなっていました。


「じゃあ、私もう寝ます・・・歯ブラシありますか?洗面所は・・・?」


 そのまま眠りたかったのですが、なんとか立ち上がり成田さんに尋ねました。


「ん・・・?あると思うけど、ちょっと待ってて。」


 成田さんはどこかから新しい歯ブラシを持ってきてくれました。


「ありがとうございます。歯みがきしてきますね・・・」


 洗面所らしき方向へ向かい、素早く歯みがきを済ませ、お手洗いも借りました。


「じゃあ、もう眠いので寝ます・・・こちらのソファーでも良いですか?毛布かなにか、貸していただけたら・・・」


 リビングに戻り、成田さんに声をかけると驚いた顔をされました。


「え、そんなにすぐ寝るの?じゃあ、こっちで寝ていいから。」


 少し呆れた風な声で成田さんはベッドルームへ案内してくれました。


「ありがとうございます。それじゃ、おやすみなさい・・・」


 すでに半分眠り気味でした。着ていた服を脱ぎ、下着になるとベッドへ入りました。とても眠くて、服をたたむ余裕もありませんでした。

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