第84話 日帰り湯

 日帰り温泉へ行く前に衣料のチェーン店に寄ってもらいました。私が下着等の買い物をする間、ナミさんは隣接していたホームセンターにいるとのことでした。

 温泉は大好きなのでわくわくしていました。札幌近郊とは言え出向く機会はまずないので、地方の日帰り湯へ行くのは珍しくて嬉しい事でした。


 日帰り温泉の雰囲気も好きでした。子どもの頃や実家に住んでいた頃は親に連れて行ってもらいましたが、大人になって札幌で暮らすようになってからはそんな機会もほとんどなくなっていました。温泉はきれいな建物で、内心浮かれていました。


 広い温泉につかるとこの上なく気持ちよく、働いたご褒美なのだと思いました。田舎と呼ばれる地域のせいか、人が少なくて空いているのも好印象でした。お風呂に入っているとアヤちゃんに会いました。


 子ども達がいないので尋ねると、タコ坊主さんと一緒だとアヤちゃんは答えました。どうやら鈴さんの別名のようでした。子ども達のお風呂は鈴さんの担当らしく、彼は良いパパなのだと思いました。


「タコ坊主さん、母性すごいから。彼におっぱいが出せたら母として勝てなかったと思う。」


 アヤちゃんの話ぶりは面白おかしくて、私はすぐに彼女が好きになりました。鈴さんとアヤちゃんは素敵なご夫婦で、良い家族だと思いました。おふたりの話す様子や、子供たちとのかかわり方も自然でユーモラスで愛を感じられました。


 お風呂の後の食事も楽しみな時間でした。畳敷きのお食事処があり、広めの席で、すでにパジャマを着た子どもたちがご飯を食べていました。ナミさんもいて、子どもたちは彼によくなついているようでした。


 どうやらナミさんは子どもが好きみたいでした。職場にいる時や私に話すときとは違って、とても楽しげで朗らかでした。むしろ子どもたち以上にハイテンションにも見えました。


 私はあまり子どもは得意ではなく、そういう人を見るとまぶしく思えてしまいます。お子様の担当はナミさんや鈴さんに丸投げし、私はアヤちゃんとゆっくりお話をしながら食事をしました。いろんなメニューがありましたが、あんかけ焼きそばを美味しく頂きました。

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