第78話 貸家訪問
札幌から高速で1時間弱の距離にある町へ向かっていました。近郊とはいえ日常では特に出向く機会もない街でした。ナミさんのご友人も何軒かの貸家を所有しているそうでしたが、そんな田舎に築40年以上も経った家を購入し、借り手がつくのだろうかと大いに疑問でした。
目的地に着いてみると、古そうではあったものの、想像していたよりも普通の家でした。庭と駐車スペースも広く、車は2~3台は停められそうなほどの敷地がありました。札幌市内でこのような広さの家を購入しようとすれば、土地代だけでもかなりするだろうと思われました。
怖いもの見たさでそわそわしつつ、ナミさんとそのお宅へお邪魔しました。足を踏み入れるなり、昭和感満載の玄関まわりのスペースがありました。シューズボックスの色や柄、床の模様も古臭くて、田舎の古い家や親戚の家を思い出しました。なんだか懐かしい気もしました。
家の中はいろいろな物が散乱していて上がるのに躊躇しました。ダンボール箱や板の重なったもの、ビニールシートなども敷かれ、床は砂ぼこりとか、木くずのようなものが散らばっていました。ナミさんは上履きを持参しており、私にはスリッパを貸してくれました。
どんな家なのかと
「ななちゃんとまーちゃんも来てたんだ。パパはいる?」
ナミさんは慣れた様子で話しかけました。
「ナミちゃん、今日あそべる?」
女の子の方が尋ねました。意外と低い声で、早口なしゃべり方でした。
「いや~、今日ね、パパのお手伝いあるからね。今度、いっぱいあそぼうね。」
ナミさんは大きな声で、ゆっくりとした口調で、残念そうな口ぶりでした。
「この人は?ナミちゃんのカノジョ?」
女の子が私の方を見上げました。それは違うでしょ、と思いました。
「いや、この人はこのお家を見たいって言うからね。見せてあげてもいい?」
「いいよ、じゃあ見せてあげる!ママー!ナミちゃんと女の人が来たよー!」
子どもたちは元気よく家の中へ駆けてゆきました。
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