第74話 身の上相談
「まあおかげさまで、ここの人たちはみんな、それぞれの形でやっていますが・・・成田さんがそういう方針だったので。従業員にも不動産を持つことを勧めてくれているので、やりやすいです。」
早川さんがそのように説明してくれました。
「そういうことだったんですか。成田さん、すごいですね。」
「あの方は筋金入りの地主さん家系ですよね。二代目だったか、三代目でしたっけ?親御さんも不動産業をされていたとか。」
そうだったのかと思いました。普通の家庭の方ではなさそうでした。
「でも、成田さんはご実家とはあまり関わりたくないみたいですけどね・・・二代目とか言われるのもキライみたいですよ。ご実家を継ぐのも嫌だったらしくて、この会社はあの人が立ち上げたものですし。」
ナミさんがぼそっと言いました。背景はわかりかねますが、どこの家庭もいろいろな事情を抱えているものかもしれないと思いました。
「そうなんですか・・・よくわかりませんけど、成田さんってどこか不思議な雰囲気がありますよね。」
一見すると近寄りがたい風貌や、独特な感性を思い返していました。率直で、意外と優しくて、良い方なのだろうと思いました。
「ちょっと変わってますけどいい人ですよ。おカネもあるし・・・ゆりかセンセイはどうなんですか?」
唐突に尋ねられ慌てました。成田さんについてなのか、お金についてなのか、わかりかねました。
「どうなんですかって・・・そうですね。お金は大事ですね・・・でもあんまり余裕がないので、頑張らなくてはです。」
とりあえず、成田さんに関してよりも、お金について返した方が無難そうでした。
「ゆりか先生、いいですね!ですよね、やっぱりお金のことはきちんと考えなきゃですよね。」
早川さんも同感だったようです。お金関係の話題も嫌いではなさそうでした。
「実は私も不動産には興味があったんです。語学講師だけでは生活できませんし、英会話教室で事務のパートもしていますが収入的には厳しくて・・・不動産オーナーになるのも憧れていましたが、私の状況では難しくて・・・」
皆さん話しやすいせいか、つい率直に最近の事情も打ち明けてしまいました。
「えっ、そうだったんですか?やっぱりご縁なんですね~・・・私達にできることがあったら協力しますから!」
早川さんは顔を輝かせ、弾んだ声で言いました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます