第66話 忘年会
自宅での鍋パーティーは生徒さん達の都合も確認し、クリスマスを過ぎた頃に調整できる日がありました。せわしなくも浮足立った年の瀬のある週末、生徒さんと成田さんを家に招くことになりました。
「わ~~、今日は鳥団子のお鍋ですか。前回のお鍋もおいしかったけど、今日のもおいしそう!」
鍋の準備をしているとユキちゃんの嬉しそうな声がしました。本当はおでんを作ろうと思いましたが須藤の好きなメニューでした。作りながら思い出してしまいそうなので違うものにしました。
この日も昼過ぎから生徒さんたちに来てもらい、英語のレッスンをしました。例によっていろいろお土産を持ってきてくれて、レッスンの後はティータイムとおしゃべりの時間でした。成田さんは夕方から呼んでいました。
「そろそろ例の成田さんが来るんですよね。どんな人なんだろう~?」
スポーツジムには来ていない未央ちゃんは興味津々の様子でした。
「成田さん、かっこいいですよね。私はゆりか先生とお似合いな気がしますけど。」
何気なく京子ちゃんが言いました。なんと返事をすればよいのかわかりませんでした。
「うん、なんか大人の魅力って感じですよね。ゆりか先生、実際どうなんですか?」
ユキちゃんにも興味深げに尋ねられました。女の子たちはこの手の話題が好きだなぁと思いました。私も他人のことならばあれこれ聞いてみたくなるかもしれませんが。
「うーん・・・そうね・・・いい人だとは思うんだけど、少し変わっているような気もするし・・・なんかちょっと怖いかも・・・?」
我ながら煮え切らない言い方だと思いました。
「え、ゆりか先生、成田さんのこと怖かったんですか?家に呼んでるのに?なんか弱みでも握られているんですか?」
未央ちゃんが笑いました。
「そっか、成田さんを呼ぶのは怖いから私達も呼ばれたのかな?ゆりか先生、策士ですね!」
京子ちゃんもからかうように言いました。
「いや、違うよ・・・?パリではだいぶお世話になってね、お礼もしたかったし。みんなのこともまた呼びたかったから一緒にと思ってね。お鍋だし。」
本当は京子ちゃんの指摘も遠からずでしたが、否定しておきました。
「この鳥団子、なにが入っているんですか?おいしそう!」
ユキちゃんがはりきった声を出しました。
「えーと、鶏ひき肉に、ニラとネギ、しいたけ、しょうが・・・あと、お酒としょうゆ、片栗粉とごま油も混ぜたよ。たくさん作ったから、おかわりしてね。」
大きめのボウルにそれらの材料を入れてよく混ぜ合わせていました。だし汁の入った鍋に、白菜、長ネギ、もやし等をあらかじめ煮ておきました。食べる時に鳥団子と、豆腐やうどんも投入する段取りでした。
作業をしているとインターホンが鳴り、成田さんが到着したのだと思いました。近くまで迎えにいっても良かったのですが、住所がわかれば建物まで来られるとのことでした。少し緊張しながら玄関のドアを開けました。
わかっていたことなのに、そこに成田さんが現れると内心焦りました。なんだか自分のアパートの狭い玄関に立っているのが似つかわしくないような立派な男性だと思いました。そのうえ彼は花束を持っていました。
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