第41話 ひとり旅
成田さんと会う日まで、何気ない数日間を過ごしていました。ガイドブックで下調べをしていたものの、当初の計画にさほど執着せずとも、パリはいずれの通りを歩いても興味深いのでした。最初の2日間ほどは天気もいまひとつながら、ホテル周辺を歩き回るだけでも刺激的でした。
パン屋さんや雑貨屋さん、地元の商店街らしき界隈ではチーズ専門店や衣料品のお店があり、興味本位に見て回るだけで時間を過ごせました。コンビニのような小さなスーパーでワインやチーズ、果物などを購入するのもときめくひとときでした。
空港バスの停留所のそばのオペラ座界隈もデパートやショッピング街がいろいろあり、他にも香水専門店や石けんのお店、洗練された文房具店など覗いてみたくなるお店が無数にありました。
食事をするお店に入るのは言葉のわからない身にはハードルの高いことでしたが、デパート内のカフェや食堂は敷居が低く感じられました。ランチだけは頑張って外食をしましたが、夜に出歩くのは怖かったので、夕食は気になる食材を購入しました。種類豊富なサラミやドライハム、鴨、マスやニシンのスモーク、詰め物をしたオリーブなど、お手軽で美味しそうなおつまみがいろいろありました。
中華惣菜のお店もあり、テイクアウトも利用してみました。旅の後半はオペラ座近くのキッチン付きのアパルトマンを予約していたので、場所の下見をかねて歩き回ったものでした。
個人的に衝撃を受けたのは、「SEX SHOP」と掲げられた看板を見かけることがありました。雑貨屋さんや小さなスーパー等のある何気ない通りに脈絡もなくあらわれ、ストレートな表現にまごつきました。そんなにハッキリ言うのかとカルチャーショックを受けました。
もしも親子連れの人が通りかかって、子どもに「セックスショップってなにが売っているの?」などと素朴な疑問をぶつけられたらどうするのか・・・?勝手にいらぬ心配までしてしまいました。
観光スポットとしては、やはりルーヴル美術館には行かなければと意気込んでいたものの、実際に出向いてみると、やはりというかすごい行列だったのでやる気をなくしました。北海道民の大半は行列する気力のない人々だと思います。寒い中、外で並ぶのは耐えられない気がして瞬時に諦めました。敷地内に並ぶ古い建築物の中央に突如置かれたような、妙にモダンなガラスのピラミッドも変だと思いました。
ルーブル美術館の近くにはおみやげ物屋さんも多かったので、あれこれ覗きながらぶらぶらと過ごしました。パリの風景の写真が美しいポストカードに惹かれ、自分で下手な写真を撮るより良さそうに思えて何枚か購入しました。
そんな具合でこれといった観光もせず、周辺を歩き回るだけで瞬く間に数日が過ぎてゆきました。旅行としてはなんとも中身の乏しい過ごし方のようにも思われますが、パリという街はそんな気ままな時間があまりに楽しく、この上なく贅沢な過ごし方でもありました。
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