第40話 パリの街
お風呂の後はテレビアニメを眺めたり、ガイドブックを読んだりしているうちに朝食をとれる時間になりました。お腹もちょうどよく空いていました。
日頃自宅ではそれほど朝食を食べませんが、旅行先でいただくビュッフェは楽しみでした。高級ホテルではなかったものの、品ぞろえはなかなかのものでした。サラダの類や数種類のハムやチーズ、殻のついたゆで卵、いろいろなフレーバーのヨーグルト、フルーツもあり、とりわけ嬉しくなったのは美味しそうなパンがあれこれと並べられていたことでした。
つやのある小ぶりのクロワッサン、四角いクロワッサンの生地にチョコレートの入ったパン・オ・ショコラ、レーズンの入った渦巻き状のミニパン、バゲットは自分でナイフで切って取るスタイルでした。
パンはいずれも美味しくて、特にクロワッサンはバターの香りとサクサク感に心が躍りました。ハムやチーズも日本のものとは異なり、独特のくせがあるもののおいしくいただけました。ワインなどあればいつまでも食べて飲んでいられそうだと感じました。
パンをいくつかお代わりし、つい浮かれて朝食を食べ過ぎてしまいました。部屋に戻ると眠気がもよおしてきて、二度寝をしました。再び起きると10時を過ぎていました。
ぼんやりしながら気ままな一人旅は良いものだと感じつつ、せっかくパリへ来たのだから出かけなくてはと我に返りました。外は明るくなっており、窓の外には古く美しい建物の並ぶ景色がありました。
身支度をして、遅ればせながらホテルの部屋をあとにしました。前日はすでに夜だったのとホテルを探すのに必死で街の景色がきちんと見えていませんでしたが、ホテルから一歩踏み出すとどこまでも続く古都の風景に息をのみました。
そのホテル周辺は特に、観光スポットというわけではありませんでした。ですがどこまでも続く、いわゆるアパルトマンと呼ばれるものでしょうか、似通った高さと色合いの優美な建築物がひたすら並んでいました。それらが私には衝撃的なまでに美しく映りました。
私の住む北海道では、あるいは日本の多くの地域で景観への配慮という概念は乏しいような気がします。ですがパリの街のように、あるいは他のヨーロッパの地域でも歴史的な景観が保全されているようですが、このような美しい街並みの中で生きられることは人生において大いなる格差といったものを思い知らされた気がしました。
ここパリでは名もない街角すら、こんなにも美しい。まるで自分が映画の中の人物にでもなったかのような、途方もない錯覚を覚えさせられるほどに異国の古い街並みというものに心奪われていました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます