第27話 気になる人

 なんと言えば良いのか、男性ながらにその方は途方もない色気を放っていました。年の頃は30代後半ぐらいに見えました。場所柄のせいもあるのでしょうが、よく鍛えられた体つきをしていました。


 初めてその人を目にした時、衝撃に近いものがありました。彼を直視できませんでした。ついその人を須藤と重ねて見てしまったところもありました。ですがその人は須藤とは全然違うと思いました。須藤も魅力ある大人の男性といえましたが、もう少し温かみを感じられる容貌でした。その人はもっと、禍々しいとすら感じる、独特の雰囲気を纏っていたのです。


 危ない、と本能的に感じました。そのように感じるのは、もしかすると私だけではなかったかもしれません。


 彼がその気になれば、やすやすと手玉に取られそうな、たやすく遊ばれてしまいそうな、特に根拠もない危機感を覚えていました。


 目が合うだけでも危険そうな、もしかすると、妊娠してしまうかもしれない・・・


 そんな馬鹿げた想像をしてしまうほど、うまく形容しがたい妖気を放っているのです。


 ユキちゃんや京子ちゃんと接点のない方には近づくこともないので、言葉を交わしたことはありませんでした。


 何曜日に来ているのか、よく把握もできませんでした。私は日中に来ることもありますが、平日の昼でもその人を見かけることがありました。つい気になって遠まきに眺めてしまうのですが、もちろん話しかけようなどとは思いもしませんでした。

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