第五話 怨念

鶴美の予想通り、空狐の一撃はあさひの乗った戦闘ヘリに直撃していた。

しかし、鶴美は信じたくなかった。

空狐をその場で倒したいと強く強く願った。その願いは全国の神主の思念を動かし、全国の稲荷神社の境内では、神主がお祓いを始めた。

同じ稲荷神社を救いたいと思った”念”は本州や四国、九州から上空を川の流れのごとく佐賀の結界へと吸い込まれるように向かっていった。


空狐は結界にひびが入り始めたのを第六感で感じ取った。

「我が力もこれまでか………」

全国の稲荷神社の思念は千年の眠りから目覚めた空狐の結界をついに破った。

待ち構えていた佐賀県警の機動隊が盾を手に突入を開始、人質の救出へと向かった。

しかし、ここで引き下がる空狐ではない。

残った怨念を振り絞って、第一陣を薙ぎ払った。よろけた機動隊は階段から転げ落ちた。

「うわあああああああ」

弱体化した空狐は再び攻撃しようとしたが、鶴美に腕を思い切り噛まれ絶叫した。

「うぐわあああああ」

「怨念も巫女の牙にはかなわないわ!」

鶴美はドヤ顔で言い切った。折り重なるように神主が空狐へと飛びかかる。

八咫鏡やたのかがみを返せええええええ」

日本の神道が復活した瞬間だった。

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