神話I 聖剣誕生
遥か古の神話の時代。
天界・魔界・人界を巻き込んだ大戦が起こった。
大戦の発端は神と悪魔の些細なすれ違いだが、その戦場となったのは人界だった。
人間は神と悪魔に、悪戯に蹂躙され続けた。
力なき人間は、時に悪魔に加担する者として神に断罪され、時には神を擁護する者として悪魔の牙の標的にされた。
その殺戮は残虐を極めた。人間達は、家族を、恋人を、仲間を悪戯に殺され続けた。
何時までも続く神と悪魔の殺戮に、人間も我慢の限界を越え立ち上がった。
国や傭兵、義勇兵が団結し神と悪魔に一矢報いるべく剣を取る。
こうして三つ巴の戦いが始まるが、特別な力を持たない人間達は少しずつその数を減らしていった。
ある時、終わりのない戦いに悲嘆し、平和を渇望する人間がいた。
その人間はオフィーリア=フレール。彼女は、恵みを齎す大地を信仰する、かつて存在した宗教の聖女だった。
彼女は三界を巻き込んだ戦の終焉を願い、幾日も祈りを捧げ続けた。捧げた祈りは昇華し、収束され、やがて核を成す。
彼女の願いが核と成った結晶は特別な力を持っていた。 傷ついた者を癒し、荒んだ心を宥め、荒廃した土地に新たな生命を宿した。
人間は飽くなき戦いに疲れ果て、彼女に希望を求めた。 彼女は救いの手を求める人々に施しを行い、人間側の士気を回復させていった。
いつからか、彼女は人間側の希望の象徴となっていった。
彼女の元に人は集まり、心に炎を灯して神と悪魔に立ち向かう。 埋めがたい実力を知恵と意志でカバーし、局面によっては人間が圧倒する事もあった。
しかし、人間の希望は半ばにして潰える事となる。
悪魔の誘惑に駆られた民衆のごく一部が、オフィーリアを悪魔に売り渡した。対価はその者自身の安寧と今後の地位だ。
悪魔に売り渡されたオフィーリアは絶望の淵にいてもなお、人々の平和を願った。
そんな彼女を想い、人々は囚われの彼女を悪魔から奪還すべく、残った人間の中の精鋭を集め救出に向かう。
彼女の元へ辿り着く前に一人死に、二人死に。救出に向かった者はどんどんとその数を減らしていった。
そうして遂に敵陣を突破した時、残っていた者は剣士のギルベルトと錬金術師のガルフだけだった。
彼女を救い出したギルベルトとガルフだったが、周囲の全てを敵に囲まれ、もはや全滅は必至だった。
その時、オフィーリアは告げる。
「この世界はこんな所で終わりません、終わらせません。世界はもっと温かく、希望に満ちたモノでなくてはならないのです。ギルベルト様、ガルフ様、どうかこの世界をお導き下さい」
オフィーリアはそっとギルベルトの剣とガルフの槌を取り、天に掲げる。次第にオフィーリアの身体は青く発光し、ゆっくりと光の粒子となっていった。
彼女自身の力を核とし、その全てを捧げて剣と槌を創造する。
その存在が希薄になると同時に、ギルベルトの剣とガルフの槌が眩いくらいに神々しく輝く。
彼女は今際の際でガルフの手を取り、その槌を共に振るう。そして、ギルベルトの剣に魂を注ぐ。
光が収まった時、オフィーリアの姿はなく、引き換えに一振りの剣が産まれた。その剣には彼女の願いと人間の希望が込められていた。
その剣は神と悪魔の悉くを討ち滅ぼした。一振りすれば海が割れ、また一振りすれば天が裂けた。
恐るべき力に圧倒され、神も悪魔も大幅にその勢力を減らし、遂にはオフィーリアの願い通りに大戦の幕を引いたのである。
後に伝説となる、『
神話の時代から引き継がれたその剣は、今もこの世界のどこかで眠っている。
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