【27 郷⇒倉 物語の進行によって変わってしまったキャラクターについて】回答。

 宝石の国は名前しか知らないが、そもそも物語は変化の話に溢れているから、返事に迷ってしまう。

 うーん。あ、フライ・ダディ・フライは好きですよ。


 さてさて、倉木が話を作るとき念頭に置くことのひとつとして「キャラクターをいかに変えていくのか」というものがあります。

 短編でも長編でも、誰にも変化がなければ、この話はいったいなんやったねん、という印象を持ってしまう。

 キャラクターという個人の変化でわかりやすく、共感しやすいものは「個人の死」ではないでしょうか。

 たとえば「主人公が死ぬ話」と「主人公が死なない話」の二つの物語があるならば、あくまで印象としては前者のほうが壮絶な物語になりそうじゃないですか。


 逆に、作者によっては、些細な変化で面白い物語をうみだす人もいます。

 たとえば「パートナーがいつもと違うオシャレをした」みたいな、気づくか気づかないかわからないレベルのことのほうが、万人には共感を得やすいかもしれませんからね。


 一方で、自身はなにひとつ変わらない主人公でも名作が多いのも事実です。その場合、主人公の芯がブレないことで、周囲の人間に変化が生じて物語に深みが増していく。天才が凡人や努力の人を巻き込む話が、このタイプになるのかな。作者よっては、こっちの物語が得意で、主人公を変化させる物語が苦手って人もいますよね。


 前フリはこれぐらいにして、物語の進行上で変わってしまった印象的なキャラクターの解答にうつります。


 結論からいうと、手塚治虫の名作漫画「どろろ」の主人公「百鬼丸」です。

 一部では、漫画史上最も設定に優れたといわれている主人公の最大の特徴は、話が進む(百鬼丸が目的を達成する)度に、どんどん弱くなっていくところにあります。


 ウィキペディアのあらすじを参考に、百鬼丸とどろろの出会いまでを縮約すると以下の通りになります。

「室町時代。武士の醍醐景光は、天下取りのため、生まれてくる自分の子を48体の魔神像に生贄として捧げる。

 その後、誕生した赤ん坊は身体の48箇所を欠損した状態で生まれる。赤ん坊は、化け物として川に流され、捨てられてしまうが、医者の寿海に拾われて、義手や義足を与えられた。

 14年後、成長した赤ん坊は百鬼丸と名乗り、不思議な声に導かれるままに自分の身体を取り戻す旅に出る。

 旅の途中、百鬼丸は幼子の盗人のどろろと出会う。どろろは百鬼丸の左腕に仕込まれた刀に目を付け、しつこく百鬼丸を付け回すようになる。

 2人旅の道中、声が教えた通り、魔物を倒すたびに奪われた48箇所の身体は1つずつ復活していく。だが、異形の体と妖怪退治の力を持つ少年、盗人の子供という身の上ゆえに、2人は行く先々で人々に忌み嫌われ、絶えず追われ続ける不遇が続いていく。だが、幾多の危機を乗り越えていくうちに、いつしか2人は相棒のような関係となっていく」


 あらすじの説明通り、魔物を倒す度に百鬼丸は、どんどん生身の人間に近づいていいきます。

 たとえば、隠し刀といった使い慣れた武器が失われる。攻撃力の低下ですね。そもそも、義手義足が強すぎる。

 防御力も低下していきます。それまで義体だったので無茶な戦い方ができていたのに、生身を取り戻すと痛みを感じるようになる。

 感覚の復活は、弱体化に拍車をかけます。

 それまで視覚がなかった百鬼丸にとって、目が復活すると眩しくて困る。聴覚がなかったので、雨の音さえもうるさくて、これまた困る。

 百鬼丸が完全な人間になるのか、人間となって、争いに終止符を打てるのか。結末がどうなるのかは、アマゾンプライムでどろろのアニメを見て確かめてみてください。

 というか、倉木も最後まで見えていないので、語れない。


 アマプラで「相席食堂」を垂れ流しにする暇があれば、きちんと最後まで見ておくべきだった。でも、きちんと観るのならば、「ザ・ボーイズ」を先に見ないと。一週間ごとに最新の配信だと、視聴が止まることがあるんだなぁ。毎週、土曜日に自作の最新話をあげている現状はよくないのかもしれない。



 今回は、様々な作品のパイオニアともいえる手塚治虫の名作「どろろ」を選んでみました。当時はあまり評価が高くなく、連載期間は約二年、コミックスは四巻というのが驚きです。

 打ち切り作品にこそ、面白い種が隠れているのかもしれない。事実、ベルセルクや鋼の錬金術師にも、どろろは影響を与えたという噂がありますからね。

 ジャンプの打ち切り作品にも、面白い設定が隠れている可能性もあるのでは?

 ダブルアーツは、いまでも大好きだ。アクタージュも終わってほしくなかった。ただ、アクタージュ原作者の被害に合われた少女たちのことを思うと、打ち切りは当然ですね。作画を担当していた宇佐崎しろ先生は、なにも悪くないので、新作を正座して待つことにします。

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