【13 郷⇒倉 プロットが先か登場人物が先か】回答/プロットを作ってから。

 長編も短編も、プロットというか、話の大筋、あらすじにあたる部分をまず考えます。

 なのに、どっちが先かというと、人物が先ですね。


 というのも、ここ数年は手塚治虫でいうところのスター・システムを執筆に取り入れてています。もっとも、あくまでスター・システムのようなもの、ですね。

 倉木流スター・システムが、どういうものかといいますと、いわば、作者の倉木さとしが運営かプロデューサーを勤める芸能事務所があって、作品に応じて、そこの役者に演技をしてもらっているイメージです。


 リレー小説から育ち、ノベライズの仕事や同人活動の二次創作を経たことで、自分以外が考えた人物は、動かしづらいと思うようになっていました。

 逆に、自分が創作した人物は、同事務所ということで、無茶振りもさせやすいし、向き不向きも把握している感じ。


 この利点としては、回数を重ねる度に、役者の演技力が増すように、人物の嘘がなくなり、作品のリアリティーが増します。質の向上にもつながる。


 欠点は、手抜きとか書き分けができないと思われることですかね。確かに、新しい登場人物を考える人数は、激減した。長編を作る際も、少しの人数ですんでますからね。


 しっかりメインで動ける人物は、僕の処女作から登場した顔ぶれもいます。

 処女作以降で、出演する小説のない役者は、裏方に回ってるイメージです。アクションシーンとかで、消えた役者と立ち回りが似てたら、処女作でブイブイ言わせてたあの人が裏方に回って演技指導に徹してるのかなとか考えます。


 短編で人物像を掴んで、そこから長編に参加するパターンも多いです。その逆で、短編は既存の人物だけで作るのもしばしば。



 なんか、やばいこと書いてる気がするので、ここで一つ真面目な話を。


「物語に始まりも終わりもない。どの地点から振り返るか、あるいはどの地点から先を語るか、人が経験の中から気まぐれに選んでいるだけだ」

 郷倉くんが、前回引用した言葉です。


 これを読んだとき、僕は物語の切り取り方に関して、脳の弁が開いた気分を味わいました。


 短編という短いスパンであれば、切り取り方はシンプルで構わないような気がします。その瞬間だけに意味を与え、見出だせるシーンにスポットライトをあてればいい。至極単純。


 ただし、長編では物語の切り取り方が複雑化してくる。

 前後のシーンとの兼ね合いや全体を通してどんな意味があるのかを、自作に問わねばならない。

 プロット段階で必要だと思って、推敲までしたシーンを、長編のクオリティーを上げるためには、バッサリと切り捨てることも必要になってくる。それだけ、作者が読者に伝えるシーンには意味がなければならないのでしょう。


 僕は、あの子のパンチラシーンを書きたくて、手癖で執筆をすることがあります。

 パンチラシーンを完成敲まで生き残らせるには、パンチラの裏側に、実は深い意味があるべきなのかもしれない。


 そうやって、クオリティーを上げた面白い作品で登場人物を動かすことこそが「登場人物ひとりひとりに対して敬意を払う」ことだと僕は思います。




 最後に、僕はがっつりとプロットを作ったら、それに満足してしまいます。最悪な場合、作った気になり、書かなくなります。逆にむちゃくちゃはやく終わることもあったかな。

 それを踏まえて、郷倉くんが、きちんとプロットを作って、時間がかかった作品と、むちゃくちゃはやく終わった作品はなんでしょう。と質問をしてみます。

 せっかくなので、カクヨム掲載作品で限定して考えましょうか。僕も答えます。




『顔のない獣その①』

 プロット段階で、だいたいのシーン数と、そこのシーンに登場する人物が誰なのかと、細かく想定した作品。その③ぐらいまでのおおまかなストーリーラインも作っていた。

 むちゃくちゃはやく完成。



『顔のない獣その②』

 当初のプロットにはなかったことが、三分の一をしめる作品。この影響で三部作の想定が四部作にのびる。

 でも、すぐに書き終えた。



『情熱乃風R』

 プロットを作った記憶がない。この一作前のオリジナル作品が、プロットをガチガチに固めた反動のためだろう。

 プロットどおりに書くという作業よりも、衝動で書くほうが性にあってるんでしょうね。

 そこそこ完成まではやかった。



『はつこいクレイジー』

 プロット段階でオチを思いつかないまま、書いた作品。これは、衝動に任せたのが悪い方向に転がった典型例。

 プロットがあるあたりまでは、はやかったが、そこからは作者が逃げたかと疑われるほどに遅かった。



『超常現象代理人』

 プロットを作って満足して、なかなか書かなかった作品。〆切を設定しなければ、いまだに書いていなかったかも。

 〆切をつくったら、すぐに完成。



『岩田屋葛藤憚その①』

 プロットは、この話が終わったあとの四作品を見据えて作り込んだ。なのに、苦労した。主人公と向き合うのが難しかったためかな。

 いくらプロットがあっても、主人公を把握していなければ、筆が遅くなる。




 あれ? 気付けば全部に、なにかをあてはめた?

 互いの掲載作に関しては、また詳しく話したいなぁ。

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