【09 郷⇒倉 結婚について】回答。

 我らの師の話は、本当でした。

 結婚したから書ける文章なんてものはない。


 いや、正しくはそれが作品にはならない。というべきかな。

 順調で幸せな結婚生活ならば、そんなものは作品にしたところで、つまらない。

 不幸なことも小説にできるのが、作家のいいところである。だが、結婚生活における不幸が仮にあったとしても、それを作品にするのはいかがなものか。自分一人の不幸ではないのだ。つまり、家族との秘密を安売りすることになる。

 そんなの、僕は嫌だ。


 さてさて。学生時代に抱いていた結婚のイメージなんて覚えていません。それを忘れてしまうのが、結婚後なのか?

 わからん。

 当時、書いていた自身の作品にヒントがあるかもしれません。

 これは、小説を書く上で変わったことを考えるのにも通じるのではないか。

 てなわけで、小説のデータを漁ったところ、独身時代に最後に書いたのは「読後感のいい復讐劇」という仮のタイトルでした。

 むちゃくちゃ人が死ぬ話です。

 あの作品をピークに、作品内での死亡者が少なくなります。

 つまり、結婚とはそういうことなのか。

 死に傾いていたものが、生に傾くのが結婚。

 作品もプライベートも。

 嫁がいなきゃ、死んでたしなぁ。

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