12:やさしさ
週末。
悠と深雪は、約束通り近くの運動公園へ行ってバトミントンの練習をした。
「あ~あ…、大丈夫?」
深雪は頑張ってシャトル落下位置に追いついてラケットを振りぬいたが、弾みですっ転んだ。努力したがまた空振りだった。
「いったぁ…。でも大丈夫!次お願いします!」
「部活じゃないんだから…。ちょっと休憩しよう。結構ぶっ続けでやってるし」
「まだ大丈夫!」
「血、すげー出てるぞ。その手当だけでもしようよ。ついでにのど乾いた」
「あ、ごめん!何か買ってくるよ、スポドリでいい?」
財布を掴んで自販機に飛んでいこうとする深雪の腕を捕まえて、ベンチに座らせた。
「怪我人の癖にどこ行く気だよ。いいから…。俺が買ってくる。深雪はとりあえず傷口水で洗ってきて」
小さい子をあやすように、悠は深雪の頭をポン、と撫でると、コート外の自販機へ向かって行った。
苦手なラケット系。本当は気乗りしなかったけど、悠が教えてくれるというので付いてきた。
しかし、想定外に楽しくて、つい夢中になってしまった。
水道で傷口を濯いでハンカチで押さえ、もう一度ベンチへ戻る。
同じタイミングで飲み物と絆創膏を買った悠が戻ってきた。
「お待たせ。ほら、膝出せよ」
「い、いいよ!自分でやるから…」
「不器用なくせに無理すんな。ほら…」
また血が滲みだした傷口をウェットティッシュで綺麗にし、大きめのバンドエイドを貼ってくれた。
「俺もちょっと無理させすぎたな…。疲れただろ、この辺にしとくか」
ごみを片付けながら悠が撤収の意を表す。深雪は慌てた。もう終わり?帰っちゃうの?
「だ、大丈夫だよ!もうちょっとやりたい!」
「さっきの深雪の打ち方見てたら、きっとまた同じ転び方して同じところ怪我するよ。それ以上ひどくなったら大変だし。今日はここまで。来週健さんに相談してコツ教えてもらおう。続きはその後かな」
学校の体育教師の名を出しながら、先のことを考えて提案してくれたのが嬉しくて、思わず頷いていた。
(でも、もう一緒にいられないのか…)
しょんぼりした様子の深雪を見て、余程バトミントンがやりたかったのかと勘違いした悠は、仕方なさそうに声を掛けた。
「もう今日は運動は出来ないけど、普通に歩くだけなら出来るだろ。メシ食いに行こうぜ」
ランチの誘いに、深雪の気分は一転快晴になる。
大きく頷いて、さっそく後片付けを始めた。
現金な深雪を微笑ましく見つめながら、あ、と悠が呟いた。
「わり、途中で図書館寄っていい?予約本取りに行きたいから」
図書館というキーワードに、深雪の背筋が凍った。
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