第3話 歯車は動き出す

 入学して一週間がたった。【悪魔】として恐れられてしまった俺は、どこを歩こうにもみんなから避けられてしまう。


 このままじゃ友達100人計画が達成出来なくなってしまうのだ。


 (やばい!なんとかして俺の悪いイメージを払拭しないと!友達二人だけ他になっちまう!)


 俺は焦っていたが、かといってどうすることも出来ないので、ほとぼりが冷めるまで待つしか方法がなかった。


 「琉星、お前サッカー部だったよな?」


 「ああ。……もう次からやめてくれよ?本当に死ぬかと思ったんだからな!」


 そう琉星が抗議してくる。……どうでもいいけど。


 「というか自業自得だろ?だから俺にはなんの否もないんだよ?…プフッ」


 「笑うな!お前が話を誘導したんだろうが!」


 「琉くん?」


 「あの時は本当にすみませんでした!」


 (変わり身早っ!)


 俺が琉星の変わり身に驚いていると、授業開始のチャイムが鳴った。


〜放課後〜


 俺はまず、合唱部の見学に行った。そして先輩方の合唱を聞いたのだが…


 (正直先輩方に劣っているとは全く思えないんだよな…これなら家で歌練をしたほうが100倍有意義だとおもうんだよな……)


 ついそう考えてしまい、さらにこの学校の合唱部には、男子が一人もいないということがカミングアウトされてしまったのだ。


 流石に周りが全員女子なのは、俺への精神的ダメージが半端ではない。


 そして何より、この合唱部では、上に行くことが出来ない。端的に言うと、俺の【目標】に成り得る人が、一人も居ないのだ。失礼だがこの人達に劣るとは微塵も思えないんだ。


 (そうなると軽音しか入る部活ないんだよな……)


 そう北校舎の4階へ昇りながら考えていた。


 しかし、そんなことは次の瞬間にどうでも良くなった。


 ふと、歌が聞こえた。


 澄んでいて、優しくて、それでいて力強くて、プロを凌駕するだろう理想の声。


 その女子の声、歌を聴いて、一瞬で【目標】ができた。超えたい!そう心が叫んだ。身体中が震えた。


 そんな衝動に駆られ、気付けば第2音楽室の扉を開けていた。


 そして、そこにいたのは先輩方ではなく、


 「香山……さん?」


 「久遠君!?」


 学校のアイドルである香山凛音だった。

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