第2話 学校にて
「ふあぁ~っと!眠いわ……」
俺、久遠終は、6時半に目を覚ました。………やばい!朝飯作る暇ねえ!
現場を即座に理解した俺は飛び起きて、洗面所に向かった。
昨日は入学式で一人気の合う友達ができた。
目標まであと99人!気合い入れて頑張るぞ!……と意気込むはずもなく、
いつものように顔を洗って自分の顔を確認した。
正直全然イケメンじゃない………顔はいい方だがせいぜいイケメンの中の
底辺だろう。
身長は176センチで、まあまあ高い方だが、運動神経は良くない……
というか俺の長所ってどこ?と考えてしまったらおしまいなので現実逃避するしかないのだ!(100%やけになってます)
そして RINE の友達がいない…これは由々しき事態だ!いくら悪口を言われても平気なんだとしても、友達いないのは辛いんだよ!
(5年間で理解してます)
まあそれは置いておいて、来週から部活動の勧誘が始まるらしい。俺は合唱部に入ろうかと考えているのだが、なかなか軽音楽部も捨てがたいのだ。
中学3年まで合唱を習っていたが、楽器はほとんど弾く事が出来ないのだ。
………歌手目指しているのに……
そんなことを考えているうちに着替え終わったので、昨日の分と纏めて洗濯しつつ、昨日買っておいたコンビニ弁当で朝食を済ませて家を出た。
〜学校にて〜
7時20分についた俺は、真っ先に学ランの中から異世界モノのラノベを取り出して読み始めた。
なぜ異世界モノのラノベを読むのかと言われたら、現実逃避以外の何ものでもないとしか言いようがないww…
それに、小4まで剣術を習っていたから、バトルモノの小説を読むと、つい興奮してしまうのだ。
10分くらい経つと、教室にクラスメイトがどんどん入り始めた。
「おっはよー!」
「おはよう」
と、元気な人にもしっかりと挨拶を返していく。
一応好印象持たれてるはず!これでも少しはイケメンだし……
(やばい… どんどん惨めになってく……)
と、精神にダメージを負いながら友達100人計画が進んでいることに一人でほくそ笑んでいると、昨日俺と意気投合したアイツが教室に入った。
「おはよう琉星!」
「よう終!今日は早いな!機能とは大違いじゃねぇか?」
「あれは……仕方ないだろ!方向音痴なんだし!」
そう俺は目を逸らしながら必死に弁明した。
神楽琉星、身長170センチでイケメン、茶髪茶目でめちゃくちゃいいやつ
まさかこんなやつがこの現代社会において、実在していたとは夢にも思わなかった。
そして、いま話していたのは昨日の遅刻事件についてだ。
あれは酷かった…だってさ、いくらなんでもマンションを出て、左に曲がるところをあろうことか右に曲がって迷子になり、そして携帯を家に置き忘れたという偶然を結びつける神様が悪いんだ!!!(自業自得だけど…)
そんなかんじで頭の中で下らない論争をしていると琉星が話しかけてきた。
「なあ終」
「……何だよ?」
「沙織見てないか?」
「なぜ俺に聞く?」
「他の男子は殺気ぶつけてくるから俺が辛いんだよ。その点お前は俺と沙織が付き合っていることに何の嫉妬も無さそうだし」
そう琉星は的確な発言をした。
琉星には中1の頃から付き合っている彼女がいる。その彼女の名前が姫川沙織。普段は元気な美少女だが、そこに琉星が加わると、デレしかない美少女になる。その事が昨日の会話で十分に分かった。
胸焼けしそうなくらい甘々なカップルの片割れを見て呆れてしまう。
今まで何人かの女子を好きになったことはあるが、【恋】をした事が無い。
好きと恋の違いは【誰にも渡したくないという嫉妬が有るか否か】ということだと思っている。
と言うか正直、
ー愛するという感情が分からないー
好きな人が他の男子と歩いていても、どうでもいいのだ。だから分からない。理解できないんだ…
そんなことを考えていると、この教室、1年2組がざわついた。
「おっ!終、このクラスのアイドルが来たぞ?」
と、琉星が俺にそういった。
その時、琉星が見ていない方の扉から姫川さんが入るのが見え、一つ策が思い浮かんだ。
「えっと…確か香山凛音さんだったよな?お前が一推しの」
とカマをかける。そしてその言葉に姫川さんが反応する。
(待機してて、コイツの本音を暴くから)
(分かった)
とアイコンタクトを使って姫川さんを待たせる。
「ああ!中学校が同じでな、性格、運動、成績、容姿全てが完璧で、
桜色の髪から【桜姫】っていう二つ名がつけられてんだ!」
そして琉星は地雷を踏みまくった。
直後姫川さんからオーラが吹き荒れた。それと同時に周りが静まる…
そしてクラスメイトたちが一斉に俺を鬼畜のような目で見る。心外だ!
「許せ琉星、俺はもう無力だ」
「は?お前何言って…沙織!これは違うんだ!これには深い訳が!「大丈夫、半殺しで済ませるから大人しくしていて?」
その日、この学校に一人の男子生徒の悲鳴が響き渡ったという。
そして、この話は、学校中に広まり、俺は【悪魔】と呼ばれるようになったのだった。
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