第25話 そしてお兄さんは正体を話した
男の方は暫く反応が無いように見えた。次の一言までは。
「その拳銃。警官ではないな?」
ピストルの軍用だとか民間用とかの違いはアタシには分からない。お兄さんにとってもどうでも良い質問だった様で早速質問を返した。
「そういうお前は誰だ?見た所ただの強盗じゃないよな?」
男は後ろを向いたまま沈黙を貫いていた。
お兄さんが近づこうとしたその時、男が咄嗟に身を屈めた。それをお兄さんは男の方目掛けて拳銃を向けようとしたのだ。
一瞬の出来事だった。屈んだ男はお兄さんの方へ蹴りを入れたのだ。
それを後ろに下がる形でかわしたお兄さんは
改めて銃を男に向けたのだ。
即座に耳を塞ぎ、目をつむった。
2発分の銃声があたしの耳に響いた。ものすごい音。
目を開けると床に倒れた男をお兄さんが銃を構えながら男のそばに跪いた。男から短機関銃を奪い取った彼は男のまぶたを閉じた後手にした短機関銃を確認していた。
彼を前にあたしは恐る恐る口を開く事にした。本当に彼の正体が気になるのだ。
「お兄さん、あなたはいったい。」
「昨日言っただろ?僕は軍人だったんだ。だからこんな事が出来た。」
嘘じゃない。けど本当の事とは思えなかった。
いくら軍人でもあんな芸当が誰にでもできるとは思えなかった。
「確か落下傘連隊の人間だって言いましたね?もしかしてクーデター事件に絡んでません?これ。」
ピクリとお兄さんの顔が凍り付く。余程嫌な所をついたのだろう。あの事件の事を。
「よく覚えているな。まぁニュースになっていた位だったからな。」
「まぁ落下傘にいたなんて言ってしまえばどの道身元がバレてしまうのだろうな。」
彼は暫く考え込んだあとあたしの方をまっすぐな瞳でみるので一瞬ドキッとしてしまった。
「改めて自己紹介をしよう、アリス。僕はアレクサンドル・タトリン元軍曹。」
自己紹介の後、さらに口を彼は開いた。
「かつて外人部隊の最精鋭だった第一落下傘連隊に所属し、同時に秘密軍事組織の工作員デルタ・ゼロだった男だ。」
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