第21話 あたしの正体が・・・
「以上が我々の要求だ。フランス側の誠意ある回答を期待しよう。」
テマムと名乗った男が自身の要求を説明し終えた。
「その娘達に手をだすな!」
突如聞こえた。叫び声。
「爺!黙りやがれ!」
校長先生だった。いつになく顔は真剣でテロリスト達相手に叫んでいたのだ。
「貴様ら、彼女達を・・・生徒達を解放しろ!」
そんな校長先生にテマムが返答する。
「流石はダリ校長、勇敢だな。それともダリ准尉と呼んだ方が良いのかな?」
その名で呼ばれ校長先生が身を固める。顔だけがテマムを睨みつけていた。
「ドイツとの最初の戦争で敗北し、その後マキやら自由フランス軍やらの抵抗運動へ身を投じドゴールから直々に戦闘十字勲章を授与された男。その戦争には俺も参加してたさ。」
「分かっているのなら今すぐ生徒達だけでも解放しろ!人質は英雄の私だけでも十分な筈だ。」
どうやら校長先生の今までの自慢話は本当だったらしい。
熱弁を振るう校長先生に対しくっくっくとテマムがせせら笑う。
「分かってねぇな、准尉。交渉の駒は多い方が良いし・・・」
「大きければ良いのさ。」
テマムの目はあたしをみていた。
隣で座らされていたマリアンヌが口を開いた。
「アリスは関係ないでしょ。この子がどっかの資産家令嬢だっていうの?」
マリアンヌのセリフを聞いてテマムが嘲笑する。
「令嬢?それ以上の存在だ。」
テマムと奴の手下たちがアタシの方を見る。不気味な光景だ。
「アリス・ジャコメッティ。またの名をアリス・レポンティーニ殿下。」
その名を奴が口にした時、あたしの背筋が凍った。分かっていても正体が割れるのは本当につらい。
テマムはニヤリと笑みを浮かべわざとらしくアタシに尋ねた。
「父親はレポンティーニの大公殿下だったと私の情報は記している。」
アタシには強がりしかなかった。
「何かの勘違いではなくて?前の大公殿下には3人しか子供がいませんよ?」
「前の大公とは言っていないがね。」
しまった。こいつに嵌められた。
「まぁ、お前は大方庶子かなんかだろう。」
「何にせよお前が世の中にバレたら困る存在って事は確かだ。でなきゃ偽名なんざ使わんしな。」
テマムの手があたしに伸ばされかけた時、叫び声がした。
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