第12話 妹とベッドを共にした
風呂を終えて簡単なパジャマ姿になった僕は他の女子生徒達から好奇心で満たされた眼差しを向けられながらゆっくりと部屋まで戻った。視線にどきりとはしたが。
扉を開けてすぐにバッグの方を確認した。特に中身を荒らされてはいない様でほっと一息ついた僕は2段ベッドの方へと顔を向ける。そこにはすでに上段のベッドにアリスが、下段ベッドにはマリアンヌが寝ていた。
申し訳ないがいきなり横にいる訳にもいかないので僕は一旦妹をおこす事にした。彼女の頬を軽くつねって彼女の瞼がゆっくりと開いていくのを眺めていた。
「あ、お兄ちゃん。おはよう。」
寝ぼけているのか分からないな。僕はそれに付き合ってみる事にした。
「お早う、マリアンヌ。まだ夜だけどな。」
気付いたのかマリアンヌが恥ずかしさで顔を赤めていく。
「な・・・何なのあんた。お風呂から出るまで遅すぎて寝ちゃったじゃない。」
「精々20分だ。お前達のより半分も短い。」
女の子の風呂は本当に長い。一時間もかけるなんて理解出来ないね。
「マリアンヌ、話は変わるがさっきの話な・・・」
つまりマリアンヌが僕と今夜一緒のベッドに寝るというあれだ。彼女も余り乗りきではなさそうだし僕自身も部屋の床にでも寝た方がお互いの為だと思う。第一年頃の女の子と一緒に寝るなんて恥ずかしすぎる。
「言い出しっぺはあたしだから、あたしのベッドで!一緒に!寝るの!」
アリスをおこさない為か小声で僕にそう囁いた。意地っ張りだなぁ、こいつ・・・。
僕も腹をくくって掛布団を上げてゆっくりとベッドの中へと入り込んだ。
僕と彼女は互いに背中を合わせた状態で同じベッドを共有している状態になった。正直兄妹とはいえこれは気まずい、というかすごく恥ずかしい。マリアンヌもそう思ったのか妹は先ほどと変わらず赤いままの顔を壁の方へ向けて僕の顔を見なくなった。ただ言葉を僕に投げかけた。
「今日はあんたのせいでとんだ災難よ。変な誤解もされるし。」
今この行動が誤解を余計に膨らますのではないか?
そういう突っ込みは置いといて僕は口を閉じたまま彼女の言う事を聞いていた。
「本当にさ、なんで来たの?返事を寄越さずに行き成り来て・・・。おかげであんたに振り回されたわよ。本当に来て大変よ。あちこちから注目を浴びて・・・」
次のセリフを発するまでには間があった。
「明日の朝にはもう帰ってくれない?すごい迷惑。」
そう言い放って以降彼女はしゃべらなかった。
そうだろうな。マリアンヌにはとっくに彼女の世界があったのだ。僕には土足でそれを荒らす権利などない。今後は一年に一度くらいなら徐々に母さんやマリアンヌとも少しづつ和解できるかもしれない。
そうした思考を張り巡らす間に僕は意識が次第に薄れていった。
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