第6話 お兄さんのホテルが爆発した
「はい、もしもし。はい先日そちらのホテルにブッキングしたタトリンですが。」
受話器を持ったお兄さんが電話相手に何かを話し始める。
「え?どういう事ですか?急にそんな・・・」
茫然としたお兄さんが受話器を持ったままあたし達の方へ顔を向けて口を開いた。
「ブッキングがキャンセルになっちまった。」
マリアンヌが面食らったのも無理は無い。
「は?どういう事?」
「俺の部屋が爆発したみたいだ。」
「爆発した?何それ面白いと思ってんの?」
「相手が嘘をつくと思うか?爆発したから予約はキャンセルになった御免て言われてガチャンだよ。」
心辺りはあった。最近テロ事件が頻発してのでもしかしたらお兄さんの部屋もそれに巻き込まれたのではと思う。
「あてはないの?近くにあんたの知り合いとかは?」
「パリならともかくこんな田舎じゃ一人もいない。連隊にいた仲間も近くにいないし。」
自分なら困っている二人をどう助けようか。そんな思考の5秒後にはもう妙案が浮かび上がった。
「ね、お兄さん。どうせならここに泊まっちゃえば?」
驚くお兄さんの顔があたしの方を見つめている。
「ここって、この学校にか?」
マリアンヌも困惑した顔であたしに話しかけてくる。
「ちょっとアリス、この学校には父兄用の宿泊施設がないのよ。寮に連れ込む訳にもいかないし・・・」
次のセリフを言うアタシの顔はいたずら好きな子供の様な笑みを浮かべていたかもしれない。
「だからあたし達の部屋に泊めれば良いじゃない。」
「「はぁ!?」」
本当に兄弟だと感じられる。ピッタリ二人のセリフがハモるのと同時に顔が真っ赤になる所が。
マリアンヌには悪いけどこういういつもつんつんしている彼女の可愛い顔が見たくて提案した所もあるし。
「ななな・・何いってんの?!こいつをよりにもよってうちの部屋に泊めるなんて!」
「そそそうだぞ!代わりのホテルを探しに行った方がー」
「お兄さん、今からホテルに押しかける方が失礼ですよ。普通はさっきみたいにちゃんと予約するものでしょ?」
ぐうの音も出ないお兄さん。正論が聞いたらしい。
「それに他の子の部屋に泊まられても困るでしょ。寮長担当を除いて先生達は全員自宅出勤だから他に方法がないよ。」
兄妹は顔を合わせてひそひそと相談した後、マリアンヌの方からあたしに話しかけた。
「もうしょうがないわね。今から学長先生に掛け合ってくれない?ったく何でこんな事になったのやら・・・」
ちょっとむっとした顔であたしを見つめるマリアンヌ。恨むぞとでもいいたげだ。
まぁしょうがないもんね。あたしも興味本位のにやけた口を手で隠しきれていないし。
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