第3話 校門に不審者が現れた

校門の方から聞こえる喧噪が次第にクラスの生徒達の注目を集め始め皆が窓越しに何が起きているのかを気になって校門の方を野次馬の気分で眺めていた。門にはつい先週役所から派遣されて来た憲兵がいた筈だ。二人とも見慣れない機関銃を携行していたのですぐに思い出せた。銃という物はいつ見ても嫌なもので印象に残ってしまう。


「何か嫌な予感がする。」


「ちょっと二人で校門まで行ってみない?」


「自習しろって言われたじゃない・・・」


マリアンヌが心配そうにあたしの方をみてそう言う。

「自習なんてだれもしてないでしょ。それに校門に行くのもっていえるでしょ。」

あたしはそう言って見せたがマリアンヌはまだ心配そうな顔を見せ続ける。


「危ないってばアリス。変な人ならどうするの?」


例えばテロリストとか?

来る訳ないじゃない。を拉致しに来たスパイとかならありそうだけどさ、そういうのってもっと人気のない所でこっそりとやるじゃない?こんな白昼堂々と学校に来る訳ない。


「本当に危ない人なら校門で憲兵の人たちがとっくに逮捕してるでしょ」

あたしはマリアンヌに言い聞かせた。彼女もどうも騒動をおこしているのかが誰か気になっている様で遂に観念した。


「しょうがないなぁ。近づくだけだからね。相手が変な動きを見せたら即退散ね。」


二人で教室を出て1階に降り校門に駆け寄ってみると珍奇な光景を見つけた。学校の警護に当たっていた憲兵二人が校門の前で青年と押し問答をしていた様だった。

憲兵達は小さな機関銃を手にもったまま目の前の奇妙な青年を警戒していた。


「貴方、許可なく学校に入れないですよ?父兄の方なら事前に学校から許可証が発行されていると思うのだがそこの所どうなんですか?」


「すみません。まさか許可証が必要とは思わなくて・・・」


緑色のジャケットを着ていた青年の方は憲兵の質問にしどろもどろとしていて落ち着きがない。彼らが警戒するのも無理はない。

先週から正体不明の強盗事件がこの地域で多発しており校長先生の説得で本校の警護の為にわざわざ派遣されたのだ。


 「変わった人だね。うちの学校に何しに来たんだろう?」


 横にいるマリアンヌに尋ねてみるが返事がない。顔を彼女に向けると何か気まずい場面に出くわしているかの様に青ざめていく顔がそこにあった。もしかしてとあたしの思考が結論に達する前に憲兵の一人があたし達に気付いて声を掛けた。


「君達!危ないから下がってて。それともこの人君達か誰かの関係者?」


間を暫くおいて恐る恐るマリアンヌが口を開いた。


「すみません。うちの兄アレクサンドル・タトリンです・・・。」


憲兵達が顔を互いに見合わせるとアレクサンドルとマリアンヌに呼ばれた青年の方を見た。

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