第13話 現首席
レルフリシラの学年の実力認定試験の日になり、俺とキュリーはレルフリシラの応援も兼ねて認定試験の見学に来ていた。
「応援しに来てくれたんですか?」
「半年間の特訓でどれくらいの実力が付いたか周りと比較するために一応見に来たよ」
「そんなに心配しなくても私は大丈夫ですよ?」
「まあそうかもな。俺の一番弟子なんだから頑張れよ?」
「ソレイア先輩には私しか教え子が居ないじゃないですか」
「一番って言っておけば何か良い気がするだろ?それに半年間の特訓で最初とは見違えるくらいになったんだから俺も心配はしてないよ」
「はい。私も問題ないと思っています」
「頑張ります!見ててくださいね!」
俺とキュリーの激励を受け取るとレルフリシラは嬉しそうに観客席から離れて行った。
「ソレイア。認定試験とは主に何をするのですか?」
「最初にキュリーが入学する時に受けた試験の様に魔法の試験から始まるんだ。次に魔法なしの剣技で総当たり戦をして、その両方で成績が良かった生徒の上位三人が学年の枠を超えた魔法ありの対人戦トーナメントに出れるんだ。そこで一位になると晴れて首席の座に着けるんだ」
「そうですか。でもレルフリシラに剣術の特訓なんてしてませんよね?」
「そうだね。でもレルフリシラは元々剣の使い方には独特の感性を持ち合わせているみたいだったから、俺が手を加えるまでも無いかなと思ってたから」
そうこう話している内にレルフリシラの魔法の試験が始まった。
測定方法は……厚い木の板を十枚並べて置いて割った枚数で測定するのか……多分発動までの速度も見られてるな。
レルフリシラは俺との特訓で作り出した魔法陣を展開した。
なんだあの魔法陣とかあんなの知らないという声がそこかしこから上がる。
魔法陣を展開した左手から空気の球が飛んでいき並んだ板の直上で静止し、さらに空気の球は板を吸い込んで粉々に切り刻んだ。
その光景に観客席とレルフリシラの後ろで自分の試験の順番を待つ生徒から驚きの声が上がる。
「レルフリシラさん凄い魔法ですね!オリジナルの魔法ですか?」
試験官の先生からレルフリシラに声がかけられる。
「はい!私だけの……私と師匠だけの魔法です!」
「そうですか。これなら総当たり戦が芳しくなくてもそこそこ良い結果になると思いますよ」
「ありがとうございます!」
元々あんまり魔法が得意じゃなかったからなぁ。そりゃそんな子がいきなりオリジナルの魔法ですって言ったら驚くよなぁ。
「ソレイア。さすが一番弟子ですね」
「だな。レルフリシラが半年間頑張ってた成果が出たな」
最初の試験が終わったレルフリシラが観客席にいる俺達のところに来た。
「ソレイア先輩!どうですか私のオリジナル魔法は!見ててくれましたか!?」
「そ、そんなに凄まなくてもしっかり見てたよ。カッコ良かった。頑張ったね」
「そうですよね!えへへ」
一番弟子を褒めちぎっている最中に第三者から、レルフリシラに声が掛けられる。
「れ、レルフリシラちゃん!す、凄かったよ!」
誰だろう?見たことない男子生徒だ。
「あのー。どちら様でしょうか?」
レルフリシラもその男子生徒のことは知らないみたいだった。
「これは失礼したね!僕はレルフリシラちゃんのファンクラブの会長だ!今日の試験をファンクラブの会員達と見学してたいんだけど、あまりに素晴らしいものだったから賛辞を言いたくてね」
ファンクラブなんてあるの?マジで?
「あ、ありがとうございます」
そう言うとレルフリシラはファンクラブ会長さんから隠れるように俺の後ろに周る。
「……君は確か一年前の首席の人だよね?レルフリシラちゃんとどんな関係なの?」
「俺はレルフリシラのししょ……「恋人です!」……は?」
俺が言い切る前にレルフリシラが恋人宣言をした。
「ソレイア先輩とはお付き合いをしてるんです。」
え?初耳なんですけど……。いつから付き合ってたの?何ヶ月目?
「君はレルフリシラちゃんと付き合っているのか!?どういうつもりなんだ!」
そんなの俺にも分からないよ!なんてったって付き合ってる自覚なんてないからな!
「私からソレイア先輩にお付き合いして欲しいって言ったんです!なのでソレイア先輩を責めないで下さい!」
「わ、分かったよ。レルフリシラちゃんがそう言うなら今のところは引き下がろうじゃないか」
……今だけじゃなくてこれからもずっと引き下がっててくれ。
「僕達ファンクラブは君を認めないからな!レルフリシラちゃんには君は相応しくないことを後々思い知らせてあげるよ!」
そう捨て台詞を残してファンクラブ会長さんは居なくなった。
「レルフリシラ。なぜソレイアが恋人なのですか?」
「ファンクラブとかやめて欲しいし、そもそも私はあんまり男の人が得意じゃないから」
「そうですか。でもソレイアは男の人ですよ」
「?。ソレイア先輩は生ゴミなので男の人じゃないですよね?」
え?マジで何言ってんだみたいな顔しないで欲しい。本当に男として見られてないってことだよね?とっても悲しい。
「そうですか。では生ゴミソレイアを恋愛対象として見ているのですか?」
「……キュリー先輩は生ゴミを恋愛対象に見れますか?」
ねぇ。俺そろそろキレて良いよね?君達にとって俺は命令権を持つ主人、もしくは魔法の師匠だよ?
「分かりません。私にはそういったことを考えないように作られていますので」
「……ソレイア先輩に身体だけの関係を強要されているんですね?かわいそう……」
そんな俺達を他所に観客席の見学に来ていた人がどっと盛り上がる。
「あの子はレルフリシラと同級生なの?」
俺は試験会場で準備をしている青い髪の子についてレルフリシラに問う。
「私と同級生のルカちゃんが今の首席なんです。ルカちゃんは凄いんですよ?魔法陣なしで魔法を使えちゃうんですから!」
魔法陣無しで?それって……。
思い当たる節がある俺はキュリーの方を向く。
「はい。あれはアルケディアですね。私と同じ自律人形ですが戦闘に特化して作られている子です」
戦闘に特化してる自律人形だって?キュリーでも十分なのにじゃああのルカって子はもっと凄いのか。
試験官の開始の合図とともに鈍い大きな金属音と共に板が斜めに両断された。その瞬間に観客席からやっぱり最高の魔法だ!とかルカちゃんかわいいよ!等の大きな黄色い歓声が色々なところから上がった。
「え?今の何したの?」
「はい。あれはアルケディアにのみ使える空間の位置をずらす魔法です」
……言ってることが分からないんだけど?
「要は凄いオリジナル魔法ってことですよ?あんな魔法は同族の変態にしか理解出来ないと思いますから。あ。ソレイア先輩は変態だから理解出来るんじゃないですか?」
「いや。あんな高等な魔法は分からないよ」
歓声に笑顔で手を振って答えたルカは一瞬だけだがこっちを見て試験会場から出て行った。
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