第9話 模擬試合 vsキュリー
下のフィールドに着いた俺とキュリーは一定距離まで離れて開始の合図を待つ。一試合しか模擬試合が行われないのもあってクラスの全員が俺とキュリーの試合を見ている。
そしてその見物人はキュリーがどれだけ強いかや、去年の首席とどっちが強いか等を期待している様だった。
「全力で来いよ?」
「はい。もちろんです」
今は目の前のキュリーに集中しろ!魔法をノータイムで放って来る様な滅茶苦茶な相手だからな、俺の得意な接近戦でカタを付けさせて貰う!
「それでは最後の模擬試合始め!」
スロイン先生の開始の合図と同時に俺は足で一気に加速をかけてキュリーに近づこうとしたが、足元が爆発して俺は後ろに軽く吹き飛ばされる。
っ!やっぱり魔法陣を展開しないから魔法の兆候が全く分からない!
空中で姿勢を制御し着地するが、その着地点にさらに爆発が起こり逆に前方向に飛ばされた。そして俺が飛ばされた先に氷柱を複数配置して俺の事を待ち受ける。
俺は氷柱を壊そうと火の玉を複数放とうとしたが、キュリーが飛ばした風の刃を剣を振ってかき消すのに僅かな時間を使ってしまった。さらに追い討ちとばかりにキュリーは氷柱の根本を爆発させ俺に向かって氷柱を飛ばした。
マズい!
飛ばされている中で身体を捻り剣を地面に叩きつけて音を発生させ、その音を自分の魔力を乗せて一帯に響き渡る様に音を増幅させた。
その瞬間に飛来していた氷柱は全て霧散し、前に向かう推進力に身体を預けてキュリーに剣を振るった。キュリーは剣を受け止めて接近戦を拒否する様に俺の足元から氷柱を発生させたが、氷柱が現れると同時に霧散した。
俺はそのままキュリーの剣を押し返して左手に展開していた風の魔法陣をキュリーに向ける。キュリーは一瞬だけ少し驚いた顔をしてから剣を捨てた。
「ソレイア。降参です」
キュリーのその言葉を聞いて、俺は左手の魔法陣を消し剣を納めた。
「キュリーの魔法はやっぱり凄いな。大怪我させない様に戦わなかったら、俺が負けてたんじゃないか?」
「はい。その条件なら私が勝ちます。それにあの音は何ですか?自分だけ魔法が使えるなんて卑怯です」
「あれは俺のオリジナルの魔法かな?自分で発生させた音に魔力を流してその流した魔力以外の魔力を、音が発生している間は使えなくする魔法だ」
俺の魔力量が半分になっているから使えないと思っていたが、意外とやってみると問題なく機能したので内心では安心していた。
「卑怯です。再戦を希望します」
「キュリーの魔法の発動速度だって普通の人からしたらよっぽど卑怯だよ?」
「いいえ。ソレイアは卑怯で卑劣で意地悪な生ゴミ野郎です」
「……酷くない?」
「はい。少し言い過ぎました。すみません」
キュリーはそう言ってそっぽを向いた。
キュリーにもやっぱり人間らしさはあるんだなぁ。
二人で下のフィールドから上の見学しているクラスの皆のところに戻る。そして上に戻った瞬間にキュリーの周りに人が集まった。
魔法陣無しでどうやって魔法を使っているのかとか魔法を使う速度をどうやったら早く出来るのか等、色々と質問責めにされて少し困った顔をしていた。
「君の戦い方はソレイアに似ているね。ソレイアに色々と教わったのかい?」
コルツがキュリーにそう質問した。
「いいえ。戦い方は私の独自のものです」
「そうなんだ。それならソレイアと凄く似ているのかもね?じゃあ噂通りソレイアと色々な相性も良さそうだね?」
ま、待て!キュリーにそんな聞き方をしたら……
「?。はい。ソレイアは私に色々と手伝ってもらったら何倍も早く終わると褒めてくれました。」
「キュリー!言い方を考え……」
俺の口は色めき立つクラスの女子達に塞がれて最後まで喋ることが出来なかった。そんな中コルツはニヤケながらキュリーにさらに質問する。
「例えばソレイアはどんなところを褒めてくれたんだい?」
「はい。『さすが俺が仕込んだ人形だ。キュリーはとっても美味しいよ』と褒めてくれました」
キュリーの記憶が改竄かいざんされている!俺はそんなことは言っていない!断じて!
俺の口を塞いでいる女子達がさらにき黄色い声を上げて盛り上がる。逆に男子達は羨ましいもしくは嫉妬を込めた目で俺を見る。
「……へぇ。君とソレイアはどんな関係なの?良ければ教えてくれないかな?」
「はい。そんなに隠す様な関係性でも無いのでお伝えします。私はソレイアに都合の良いお人形です」
俺の周りの女子達は声を高らかにして倒れてしまった。そして男子達は「お前の人形を俺にくれよ?」などと言ってきた。
……君達が思っている様なことは全く無いからね?そしてキュリー!完全に悪意があるだろ!?さっきの模擬試合を根に持ってるな!
そんなこともありつつ団体戦も行った。気を使った女子達が俺とキュリーをセットにしてチームを組ませたので、もちろん俺のチームが勝ち星を一番多く稼いだ。しかし俺は今日の模擬試合で、『卑猥なお人形遊びが好きな元首席』の称号を手に入れた。
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