第847話 漆黒の剣鬼
「喰らえぇええっ!!」
『ッ……!?』
剣の勇者であるシュンはあらゆる武器を扱いこなす能力を持っており、仮に聖剣の類であろうと彼が手にすればその能力を発揮する。デュランダルから強烈な衝撃波が放たれ、バッシュの肉体が後方へと吹き飛ぶ。
バッシュの巨体は王城が崩れた際に出来上がった瓦礫の山ごと吹き飛び、そのまま大量の瓦礫の中に埋まる。普通の人間ならば死んでもおかしくはない一撃だが、相手は魔王である以上は油断は出来ない。
「どうした!?さっさと出て来い!!」
「嫌な気配が消えない……二人とも気を付けるんだ、まだ生きているぞ!!」
「分かってる!!」
瓦礫の山にバッシュが埋もれようとレア達は決して油断はせず、相手が出てくるのを待ち構える。すると、瓦礫の山が震え始めた途端、内部から巨大な漆黒の刃が誕生した。
「うおっ!?」
「危ない!?」
「くうっ!?」
『図に乗るな……勇者がぁっ!!』
瓦礫を吹き飛ばしながら、膨大な闇属性の魔力で構成された漆黒の巨大な刃を形成したバッシュが現れると、彼は3人に目掛けて剣を振り抜く。3人は攻撃を躱す事に成功したが、その代わりに周囲に散らばっていた瓦礫が吹き飛ばされる。
巨大な大剣を手にしたバッシュは攻撃を繰り返し、それに対してレア達は避けるのが精いっぱいだった。あまりにも攻撃範囲が広すぎてしかも威力も大きく、一撃でも受ければ戦闘不能は避けられない。
「くそっ、卑怯だぞ!?」
「くぅっ……このぉっ!!」
「何とか近づかないと……うわっ!?」
『旋風!!』
バッシュは戦技を発動させ、大振りに大剣を振り払うと、更に刃が伸びてレア達へと迫りくる。避けるにしても上空に飛ぶ以外に方法はなく、その攻撃に対してレアとシュンは剣を構えて受け止めようとした。
「うおおっ!!」
「負けるかっ!!」
「お、お前等!?」
『ふんっ……力比べで勝てると思っているのか!?』
二人がかりで刃を受け止めたレアとシュンだったが、驚異的な力で押し返され、徐々に抑えきれなくなる。剣の勇者であるシュンとレベルとステータスを限界まで上昇させているはずのレアでさえもバッシュの力を抑えきれない。
(なんて力だ……竜種よりも強い!?)
バッシュの圧倒的な腕力にレアとシュンは追い込まれ、このままでは抑えきれないと思われた時、ここでシゲルが動き出す。彼は瓦礫の山に視線を向け、大きめの瓦礫を持ち上げると、バッシュに向けて放り込む。
「この野郎!!」
『無駄なあがきを……!?』
放り込まれた瓦礫に対してバッシュは片手で剣を持ちながらもう片方の腕で破壊する。しかし、瓦礫を破壊した際にシゲルの姿を見失う。
瓦礫を囮にしてシゲルは場所の移動を行い、彼は自分が身に付けていたフラガラッハに手を伸ばす。フラガラッハを彼が装備していたのはステータスの向上のためだが、シゲルはフラガラッハを手にするとバッシュの背後へ向けて突き刺す。
「うおらぁっ!!」
『愚かなっ!!』
後ろから剣を突き刺そうとしてきたシゲルに大してバッシュは手を伸ばし、刃を受け止めた。刃を手で止めた彼にシゲルは目を見開くが、バッシュはフラガラッハを握りしめて破壊しようとする。
『この程度の聖剣で俺を殺せると思ったか?』
「ぐぐっ……!?」
バッシュは聖剣を握りしめる力を強め、決して手放さない。聖剣に触れれば彼も無事では済まないはずだが、バッシュは全身から闇属性の魔力を纏って更に威圧感を増す。
先ほどのヒナの聖属性の広域魔法によってバッシュは弱体化しているはずだが、それでも圧倒的な程の力の差を誇り、このままでは彼には勝てない。だが、この時にレアは大声を上げた。
「サン、アカ!!今だぁっ!!」
「きゅろろっ!!」
「シャアアアッ!!」
『何っ!?』
レアが大声を上げると上空からアカに乗り込んだサンが現れ、彼女は上からバッシュへと接近する。その光景を見たバッシュは咄嗟に反応しようとしたが、両腕は勇者達に封じられている。
鬼王を握りしめる右腕はシュンとレアに抑えられ、左腕はシュンの手にするフラガラッハを抑え込むのに利用しており、この状況では上空から近付いてきたサンに対応できない。
「これでも喰らえぇっ!!」
『ぐうっ……!?』
サンの手元には大型の電灯が握りしめられ、それを利用してバッシュの肉体を照らす。最初は目眩ましのつもりかと思ったバッシュだったが、直後に肉体に異変が訪れる。
『ぐああああっ!?』
「おっしゃあっ!!効いたぞ!!」
「今だ、畳みかけるんだ!!」
「うおおおおっ!!」
何故か電灯の放つ光を浴びた瞬間にバッシュは苦しみ悶え、身体中から黒煙が噴き出す。この煙の正体は闇属性の魔力の残滓であり、サンが持ち込んだ電灯によって彼は一気に魔力を失ってしまう。
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