第844話 バッシュを倒す方法
「ふむ……では、勇者殿のわだかまりが解けたところでまずは話し合いを行おうではないか」
「バッシュを倒す方法を考えるのでござるな?」
「奴がいくら強いと言っても、所詮は悪霊の類にしか過ぎません。となると弱点も決まっています」
カレハの言葉にハンゾウは頷き、リリスもバッシュの弱点を告げる。いかにバッシュが強大な魔力を所有しようと、彼が死霊である事に変わりはない。ならば倒す手段は確実にあるはずだった。
「死霊の弱点は聖属性の魔法ですね。ただの死霊人形なら火属性の魔法で身体を焼き尽くせば倒せる可能性もありましたが、さっき倒した化物の件もありますし、肉体を焼き尽くしても倒せるとは限りません」
「ああ、僕の記憶の限りだと皆さんが倒した敵の正体はジャン……魔王の配下の竜人で間違いないはず。ジャンは元々は死霊人形だったはずだが……」
「私達が倒した時は肉体なんて一欠けらも残ってませんでしたね。ですけど、これは見つかりました」
「それは……死霊石か?」
リリスは掌を差し出すと、彼女の手の中には砕けた死霊石が乗っており、これはジャンを倒す時に入手した代物だという。手に入れた場所はジャンが倒された場所に散らばっていたらしく、それを拾い上げてきた。
現時点では砕けた死霊石から魔力は一切感じられず、ただの硝子の破片のように変化していた。この破片にはもうジャンの魂や闇属性の魔力が残っておらず、完全にジャンはこの世から消えた事を意味している。
「この死霊石はさっきの化物が消えた場所に落ちていました。方法は不明ですが、どうやらこの死霊石を媒介にして魔力で肉体を構成させていたようです」
「そんな事が出来るのか!?」
「実際にやってたんですから信じるしかありませんよ。それにさっきも言っていたでしょう?剣の魔王が持つ鬼王も魔力を実体化させる能力があります。つまり、魔力を実体化させて肉体を構築させる方法があってもおかしくはありません」
「その方法はあると思う。実際に私も爪を作り出せるから」
説明を聞いていたネコミンは皆の前で魔爪術を発動させ、自分の手元に魔力で構築した爪を見せつける。確かに彼女の魔爪術とい同じ原理で魔力を肉体代わりに構築させる方法があってもおかしくはない。
「ふむ、ならば剣の魔王の肉体を焼き尽くしたとしても奴を倒すには至らないという事か……」
「そもそも剣の魔王は甲冑を身に付けていましたからね。あの甲冑も恐らくは普通の代物ではないですよ」
「前にギガンが装着していた物と同じものかもしれない。そう考えると熱耐性もあるかも」
ギガンが装着していた漆黒の鎧はマグマの中に潜り込んでも平気な程の高い熱耐性を誇り、どのみち火属性の魔法で鎧を破壊するのは難しそうだった。仮に鎧を破壊して肉体を焼き尽くしてもジャンの様に変貌する可能性がある以上、火属性の魔法攻撃による討伐は得策ではない。
「となると、正攻法は聖属性の魔法攻撃による浄化ですね……といっても、それも難しいですね」
「うむ……我々の中で聖属性の浄化魔法を扱えるとしたら」
「は〜い!!私、使えるよ!!」
聖属性の浄化魔法を扱える人間は修道女と呼ばれる職業の人間しかいないのだが、魔術師の勇者であるヒナはこの世界のありとあらゆる魔法を扱える加護を持っているため、浄化魔法も当然だが使用できた。
他に聖属性の攻撃魔法を扱える者はおらず、一応は治癒魔導士であるネコミンならば魔爪術や回復魔法を使えば聖属性の魔力を纏わせて戦えない事もない。
「私も戦えない事はないと思うけど……」
「それは止めておいた方がいいですね。あの魔王の力は十分に知ってるでしょう?あれほどの力を誇る相手に近付くだけで一苦労ですよ」
「むうっ……」
「なら、聖剣を持っている拙者たちが!!」
「そうだな、私達も行くぞ!!」
ネコミンの同行は認められず、チイとハンゾウが名乗り上げる。彼女達は聖剣フラガラッハを所有しており、確かに聖剣を利用すればバッシュにも対抗できるだろう。
「レア殿、俺にも聖剣を貸してくれ!!必ず力になる!!」
「きゅろっ!!サンも一緒に戦う!!」
「ぷるぷるっ(遂に本気で戦う時が来たか……)」
「隊長、俺達も行くぞ!!」
「駄目ですよ、無駄にレアさんに能力を使わせるわけにはいきません」
他の者達も次々と名乗り上げるが、それに対してリリスは否定する。確かにレアの能力を利用すれば聖剣を作り出して他の者に与えるのも難しくはない。
だが、既に現在の時刻は深夜を迎え、日付はもう変わっていた。という事は今日の内にレアが文字変換できる文字数は10文字のみであり、その貴重な10文字を使用させるのは得策ではないとリリスは語る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます