第828話 バッシュの動向

「ぐぅっ……おのれ、魔王め!!王城を崩壊しただけでは飽き足らず、我が物顔のように城の中にいるとは……許せん!!」

「落ち着くんだ将軍、興奮するとまた傷口が開くぞ」

「傷口が開く?それはどういう意味ですか?もう治療は終わったのでは……」



ライオネルが包帯を巻いた状態で居る事にチイとハンゾウは疑問を抱き、回復薬の類を使用すれば傷などすぐに治るはずだった。だが、リルはそんな二人に対して思いもよらぬ言葉を告げた。



「治らないんだ。いや、正確に言えば治りが遅くて完治に時間が掛かるらしい」

「治りが遅い……?しかし、獣人族ならば他の種族よりも再生力は高いのでは?」



獣人族は全種族の中でも運動能力に優れ、他にも肉体の再生機能が高い。普通の人間ならば致命傷の類の傷でも治療を受ければ瞬く間に治る事も珍しくはない。


だが、ライオネルは治療を受けたはずだが未だに戦闘で負った傷は癒えておらず、彼は悔し気な表情を浮かべながら包帯を巻かれた箇所を抑え込む。



「どういうわけだか奴等から攻撃を受けた傷口は治りが遅い……回復薬を注いでも傷口の治りは遅く、今は薬草の粉末と聖水で湿らせた包帯を巻いて治療している所だ。これでも大分楽になった方だが、完治には数日かかるらしい」

「どういう事でござる?まさか、毒物をしこまれたのでござるか?」

「いや、恐らくは闇属性の魔力のせいだ。ライオネル将軍が戦った時、奴等は攻撃の際に闇属性の魔力を宿していた。そのせいで将軍は攻撃を受けた際に闇属性の魔力に侵され、肉体の回復機能が一時的に低下したらしい……あくまでもリリスの考察だがな」



ライオネルはホムラとバッシュとの戦闘の際、二人の闇属性の魔力が肉体に流れ込んだらしく、そのせいで肉体の回復機能が狂わされたという。普通ならば放っておいても治るような毛が出も現在の彼は治らず、回復薬などの類でも完全な治療は出来ない。


一応は聖水などの聖属性の魔力を宿す物を使用すれば体内に混じった闇属性の魔力は浄化できるらしいが、それでも体内に行き届いた闇の魔力を浄化するには時間が掛かる。だからこそ現在のライオネルは怪我が治らず、本調子ではなかった。



「僕達も奴等から怪我を負わされていたら危ない所だった。もしも大怪我を負わされていたら死んでいたかもしれない」

「むうっ……そのような能力を持っていたとは、油断ならぬ相手でござる」

「そういえばリル様、例の勇者はどうしましたか?」

「……一応は治療した後、この王都の外に避難させている。リリスによるとしばらくは目を覚ます事はないらしい。別に目を覚まさなくても我々には関係ないが」

「リル殿……それはちょっと可哀想のでは?」



チイがそれとなくホムラに乗っ取られたシュンの安否を尋ねると、リルは不機嫌そうに治療を終えて現在は安全な場所に避難させた事を伝える。彼女にとっても非常に不本意だが、勇者であるシュンを放っては置けない。


シュンはホムラに憑依されていた影響で彼も体内に闇属性の魔力に侵され、現在は治療を受けているが目を覚ますのには時間が掛かる。だが、勇者であるシュンは普通の人間よりも高い魔法耐性と回復機能を持っているため、いずれは必ず目を覚ますだろう。



「今は動けない勇者よりも魔王の事を何とかするべきだ。転移台を破壊した以上、他の場所に移動する事は出来ない」

「まさか転移台からアンデッドが溢れ出すとは……魔王軍め、いったいどんな手を使ったのだ」

「他の地域に設置した転移台が心配でござるな」

「ああ、帝国や巨人国も攻撃を受けている可能性がある。海底王国の方は大丈夫だろうが……北方領地と巨塔の大迷宮に置いてきた転移台が心配だな」



世界各地にレアが製造した転移台の方も異変が起きている事はリル達も把握しておらず、彼女達は皆が無事である事を祈る事しか出来ない。だが、今は他の地域の心配よりもまずは魔王をどうにかするべきかだった。



「皆さ〜ん、無事ですか?」

「差し入れを持って来た。街の人たちが作ってくれたおにぎり、いっぱい持って来た」

「おおっ、食事か!!それは有難いな!!」



会話の際中にリリスとネコミンも訪れ、二人は他の兵士と共に見張りを行う者達のために食事を運んできてくれた。避難の際中にも関わらず、兵士のためにわざわざ一般人が作ってくれた食料を運んできた事にリルは少し驚く。



「これは……いったいどうしたんだ?」

「街の人たちの善意ですよ。わざわざ王都から離されるというのに自分達の食料を使って私達のために作ってくれたんですよ」

「これを食べて悪い魔王をやっつけてと頼まれた。だから私達はしっかりと食べて英気を養う必要がある」

「そうか……なら有難く頂こう」



リルは大量のおにぎりを前にして悪いと思いながらも街の住民の好意は拒む事は出来ず、有難く他の兵士と共に頂く事にした。自分達も辛い時にわざわざ兵士他のために食料を分けてくれた民衆に感謝しながらこれかの事を話し合う。




※寝坊しました。(´;ω;`)スイマセン

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