第819話 砂鮫の襲来

「はぁあああっ!!」

『ゴォオオオオッ!!』



ゴーレムの大群に対してレアは二つの大剣を手に切りかかり、大迷宮の出入口である転移台へと向かう。次々と襲い掛かるゴーレム達を斬り倒しながらも転移台が存在する広場へ向けて駆け出す中、キングゴーレムが本格的に動き出す。



「ゴガァアアアッ!!」

「うわっ……くそっ!!」



キングゴーレムは崩壊した建物の瓦礫を拾い上げると、レアへと向けて投げ飛ばす。それに対してレアはデュランダルで応戦し、衝撃波を打ち込んで瓦礫を破壊する。


少しでも足を止めるとゴーレムの大群が追いつき、レアを追い込もうと襲い掛かる。それに対してレアは剣で応戦しながら先へ進むが、予想以上にゴーレムの数が多すぎた。



(こいつら、何体いるんだ!?)



いくら倒しても切りがなく、それどころか数を増やしていく。いったいこれほどのゴーレムをどうやって用意したのかとレアは戸惑うが、今は考えている暇はない。



(こうなったらキングゴーレムを仲間にして……)



以前のようにレアは最も戦闘力の高いキングゴーレムを従えようかと解析と文字変換の能力を発動させようとした時、ここで右手の剣を手放す。詳細画面に文字を書き込むにはどちらかの手を自由にしなければならない。


右利きであるレアの場合は文字変換を行う場合は常に右手で行う。だからこそ右の手を自由にしなければならないのだが、ここでキングゴーレムの様子がおかしくなる。



「ゴガァッ!?」

「えっ?」



レアが解析を発動しようとした途端、キングゴーレムは苦しみ始めた様に胸元を抑え込み、何を考えたのか自分の両手を胸元に叩き込む。まるでゴリラのドラミングのようにキングゴーレムは胸元を叩きつけ始めた。



「な、何だっ!?」

「ゴガアアアッ!?」



キングゴーレム自身もまるで自分の身体が勝手に動いているかのように困惑しており、やがて胸元に亀裂が走ると、人間の心臓の部分に当たる場所に赤色に光り輝く魔石が露出した。ゴーレムは魔石を核にして存在を保つため、キングゴーレムは自らの弱点を晒す。



「ゴガァアアアッ!!」

「まさか……やばいっ!?」



核が露出したキングゴーレムを見てレアは嫌な予感を浮かべ、慌てて距離を取るために駆け出す。しかし、キングゴーレムは自らの両腕を振りかざし、核に目掛けて強烈な衝撃を与えた。


自分自身で核を破壊したキングゴーレムは意識を失い、地面に倒れ込む。この際に肉体は崩れ去り、あちこちに魔石の破片が飛び移る。その光景を見てレアは唖然とした。



(自殺?いや、まるで身体が勝手に動いているように見えた……でも、どうして?)



散らばった魔石の破片に視線を向け、どうしてキングゴーレムが自らの核の破壊に至ったのかと戸惑うと、ここである事に気付く。それは他のゴーレム達が散らばった破片を拾い上げ、それを口の中に放り込む。



「ゴオオッ……!!」

「アガァッ……!!」

「食ってる……まさか!?」



キングゴーレムの砕けた破片をゴーレム達が飲み込んだ途端、突如として全てのゴーレムの肉体が発熱し、まるでキングゴーレムの核を吸収しているように見えた。特にマグマゴーレムの場合は変化が激しく、より肉体が変化していく。




――ゴォオオオッ……!!




全てのゴーレムがキングゴーレムの破片を飲み込んだ途端、全体が赤黒く変色し、やがて肉体も変形していく。キングゴーレムの核を吸収してより危険な存在へと変貌したゴーレムの姿を見てレアは冷や汗を流す。


このまま留まり続けるのは危険だと判断したレアは一目散に駆け抜け、ゴーレムの大群から距離を取ろうとした。だが。そんな彼の前に新手の敵が出現した。



「シャギャアアアッ!!」

「なっ!?こいつは……砂鮫!?」



本来ならば巨人国の領地に存在する砂漠にしか生息しないはずの「砂鮫」までもが出現し、街道を移動しながら接近してきた。それを確認したレアは咄嗟にデュランダルに視線を向け、刃を地面に差し込む。



(やった事はないけど……やるしかない!!)



デュランダルを地面に突き刺した状態でレアは集中すると、刀身から強烈な衝撃波を繰り出す。衝撃波をジェット噴射の如く利用してレアは空高くに飛び上がると、砂鮫を越えて移動を行う。



「シャギャアッ!?」

「じゃあな、暴食魚!!」



砂鮫を飛び越えたレアは一気に転移台が存在する広間にまで移動を行い、ここまで来れば出口までもう少しだった。遂に転移台を視界に捉えると、敵が存在しない事を把握して急いで転移台へ向かう。



「外へ出られればこっちのもんだ!!」

『ゴォオオオッ!!』

「シャアアッ!!」



転移台に向けてレアは駆け出し、その後をゴーレムの大群と砂鮫が追跡を行う。だが、先にレアは転移台に辿り着き、即座に起動させようとした。



(よし、これで外へ……外?)



転移台に乗り込んだレアは即座に転移台を起動させようとしたが、ここである違和感を抱く。仮に魔王軍がこの大量のゴーレムを操っていた場合、どうして転移台の広間には魔物を設置させなかったのか疑問を抱く。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る