第818話 レアの生還
「――ぶはぁっ!!しっ……死ぬかと思ったぁっ!!」
巨塔の大迷宮の砂漠にてレアは全身が砂まみれになりながらも砂嵐を乗り越え、どうにか転移台が存在する街へと辿り着く。ここまで来るのに相当な時間を消費してしまったが、なんとか生き延びる事は出来た。
魔王城が崩壊した直後に砂嵐に襲われた時は駄目かと思ったが、根性と気合で生き残る事が出来た。最初の頃と比べてレアも成長しており、最近は厳しい修行を乗り越えた事で精神面も強くなっていた。だからこそ砂嵐に襲われた時も諦めずに生き残るために抗う。
「ふうっ、こんな時にサンがいてくれたらサンドワームに変身させて砂漠を乗り越えられたのに……いや、そんな事を言っている場合じゃない!!早く皆の元へ戻らないと!!」
レアは魔王城に設置されていた転移台を確認して重要な秘密を知り、転移台は波長を調整する事で他の転移台に自由に行き来できることが判明した。この機能を所持しているのは特別な転移台に限られるため、これまでにレアが制作した転移台には存在しない機能だった。
魔王軍に雇われた暗殺者から回収した転移台は元々は魔王軍が制作した転移台ではあるが、魔王城に設置されていた転移台とは種類が異なるため、解析した際もただの転移機能が備わった魔道具だとしか判明しなかった。しかし、魔王城に存在した転移台は他の転移台に自由に移動できる能力がある事が判明する。
レアが魔王城に乗り込んだ時に城が崩壊したのは偶然とも思えず、何者かが魔王城の転移台を利用し、彼を待ち伏せていた。そして彼が乗り込んだ時に魔王城を崩壊させ、自分は転移台で逃げ出した可能性も高い。
「くそ、誰の仕業か知らないけど覚えてろ……いや、それよりもすぐに外の皆の元に避難しないと」
街に辿り着いたレアは転移台が存在する場所に向けて移動を行い、早く外へ脱出しようとした。だが、途中で街中を移動していると違和感を覚え、雰囲気がいつもと異なる事に気付く。
「何だ、この嫌な感じ……!?」
周囲の様子がおかしい事に気付いたレアは即座に「地図製作」を発動させ、自分の周囲の状況を伺う。その結果、街に存在する建物のから大量の敵の反応が表示されている事に気付く。
「まさか、ここも待ち伏せされていたのか!?」
敵の反応を確認したレアは収納石のブレスレットを使用し、異空間からフラガラッハとアスカロンを取り出す。そして敵が現れるのを待ち構えると、あちこちの建物から鳴き声が響く。
――ゴォオオオッ!!
姿を現したのは多数のゴーレム種であり、これまでにロックゴーレム、サンドゴーレム、マグマゴーレム、更には建物よりも巨大なキングゴーレムが出現した。
周囲を多数のゴーレムに囲まれたレアは唖然とした表情を浮かべ、これほどの規模のゴーレムの大群と対峙した事はなく、しかもこの階層では一度も遭遇した事がなかったゴーレム種も含まれている事に戸惑う。
(こいつら、何処から現れたんだ!?まさか……)
多数のゴーレムに取り囲まれたレアは少し前の出来事を思い出し、巨人国に向かう途中の砂漠でもゴーレムに襲われた事を思い出す。あの時は地の魔王がゴーレムを従えて待ち伏せていたのだが、今回も何者かがゴーレムを操ってレアを待ち構えている可能性もある。
(まさか、魔王軍の仕業か……いや、今はそんな事を考えている場合じゃない!!)
ゴーレムに取り囲まれたレアは転移台が存在する場所に向けて駆け出し、その後をゴーレム達は追跡する。ゴーレム種の共通点は足が遅いのでレアの脚力ならば簡単に振り切れると思われたが、ここでキングゴーレムが動き出す。
「ゴガァアアアッ!!」
「うわっ!?」
キングゴーレムは老朽化した建物を破壊すると、その瓦礫を持ち上げてレアの進路方向に向けて瓦礫を投げ飛ばす。その結果、瓦礫によって道を塞がれたレアは立ち止まるしかなく、その間にもゴーレムは迫る。
(くそ、こいつらやっぱり普通のゴーレムじゃない……明らかに統率された動きだ!!)
野生種のゴーレムならばとるはずがない行動を起こし、逃げようとする自分を追い詰めるゴーレムの大群に対してレアは戦うしかないと判断すると、ここで武器を取り換える。
(この手の奴等に対抗できるのは……この二つだ!!)
フラガラッハとアスカロンを異空間に戻すと、今度はデュランダルとドラゴンスレイヤーを取り出し、両手に大剣を構えたレアはゴーレム種に向けて駆け出す。
デュランダルは衝撃波を生み出す力を持ち、この衝撃波はゴーレム種にとっては有効な攻撃手段だった。衝撃波を受ければ大抵のゴーレムは内部に存在する核が影響を受けて破壊され、核を失ったゴーレムは機能しなくなる。
ドラゴンスレイヤーの方もあの地竜を打ち倒す程の破壊力を誇り、しかもレアの腕力ならばロックゴーレムだろうがキングゴーレムだろうと破壊できる。両手に世界最硬の聖剣と世界最大の大剣を手にしたレアはゴーレム種に切りかかった。
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