第817話 新型魔導大砲
「まだ完成したばかりの試作品ですが、この際に威力を試しましょうか!!全砲門、発射準備!!」
『発射準備!!』
「ちょっ……!?」
飛行船の砲門から魔導大砲が設置され、地上のアンデッドの大群に向けて砲台が構えられる。その直後、砲口が光り輝くと、魔石の塊が撃ち込まれた。
「魔導大砲、発射ぁあああっ!!」
『発射!!』
リリスの号令の元、飛行船の砲門から魔導大砲の砲弾が発射され、地上に存在したアンデッドたちは大爆発によって吹き飛ばされる。しかも普通の砲弾とは違い、魔導大砲が発射するのは魔石の塊であり、その威力は凄まじい。
火属性の魔石の塊が次々と撃ち込まれ、アンデッドの大群は丸焼け処か全身が木っ端微塵に砕け散り、更に崩壊した城の瓦礫を吹き飛ばす。
「うわわっ!?」
「ひいいっ!?」
「な、なんて威力だ……」
「だが、アンデッドはいなくなった!!今のうちに早く登るんだ!!」
魔導大砲によってアンデッドの大群が蹴散らされた事により、地上に残っていたリル達も避難を開始する。全員が乗り込み、城内に誰も残っていない事を確認すると、飛行船は浮上を開始した。
「よし、全員乗り込みましたね!!では離陸しますよ!!」
「あ、ああ……だが、これだけの大人数が乗り込んでいるが本当に大丈夫なのか?」
「問題ありません。この飛行船はただの飛行船じゃありませんから!!」
城内に残っていた人間を全員乗せると、飛行船は徐々に浮上していく。だが、ここで予想外の事に城の崩壊が早まり、ゆっくりと飛行船へ向けて傾いていく。
「ま、まずいでござる!!城が崩れて……このままだと押し潰されるでござる!?」
「どうするんだリリス!?」
「くっ、仕方ありませんね……ロケットエンジンを点火して下さい!!」
『アイアイサー!!』
「あいあい!?」
傾いてくる城の様子を見てリリスは仕方ないとばかりに指示を出すと飛行船の後部に設置された巨大な砲台が向きを変えると、巨人族が砲台の中に火属性の魔石を放り込む。
魔導大砲の中でも一番巨大な砲台に砲弾が設置されると、城が崩れる寸前に咆哮が光り輝き、まるでロケット噴射の如く火属性の魔力が噴き出す。その結果、飛行船は超加速して王城から離れた。
「ひゃっほう!!これが飛行船スカイシャーク二号機ですよ!!」
「スカイシャーク!?」
「二号機という事は……一号機はどうなったのでござる!?」
「あ、一号機は実験の過程で海の藻屑となりました」
「その話、聞いてないんだが!?」
リリスが当たり前のように答えたが飛行船が既に一代目が壊れている事にリルは突っ込みを入れる。だが、彼女が飛行船を用意してくれたお陰で王城から脱出するのに成功し、倒壊する城から逃れる事が出来た。
城が崩れ落ちる光景を目にしながらリリス達は飛行船の船上から呆然とした表情を浮かべ、建国以来から存在する王城が崩れていく光景を見てやるせない思いを抱く。
「くそっ、魔王軍め……よくも私達の城を!!」
「城を破壊するなど……剣の魔王、侮れぬ存在でござる」
「いや……城などまた作り直せばいいさ。どんな物でもいつかは壊れる時が来る。だが、人がいればまた一から新しい物を作り出せる。皆が無事に脱出できてよかった」
「うむ、リル女王の言う通りじゃ……しかし、これから大変な事になるぞ」
飛行船で城内に存在した人間は救助する事は成功したが、問題なのはこれからの事だった。王城に残った剣の魔王、世界各地に置いて来てしまった転移台の確認、他にも修行に出向いた勇者たちとの合流、問題は山積みである。
これからケモノ王国はこれまでにない最大の危機を迎える事を予感しながらもリル達は戦場から王城の様子を伺う。だが、ここでリリスは衝撃的な一言を告げた。
「あ、まずい……燃料がそろそろ切れそうですね。墜落するかもしれません」
『えっ!?』
次の瞬間、飛行船の高度が一気に落ち始め、飛行船は街中に向けて突っ込んでいった――
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