第816話 新生!スカイシャーク号!

「リル殿、これ以上はもう城が持たぬぞ!!」

「このままでは生き埋めになってしまいます!!」

「いったいどうすれば……」



城の崩壊が遂に最高潮を迎え、中庭の方にも瓦礫が降り注ぎ始める。それらに対してカレハは芭蕉扇を使用して避難してきた者を守ろうとするが、城が完全に崩壊すれば流石に彼女でもどうしようも出来ない。


中庭に逃げ込んでも逃げ場はなく、助けを求めようにもこの状況下では助けられる存在はいない。もう駄目かと思われた時、ここで中庭に唐突に大きな影が差す。



「えっ!?な、何でござるか!?」

「急に暗くなって……あ、あれはっ!?」

「み、見ろ!!何だあれは……巨大な鮫が浮いているぞ!?」



中庭全体が大きな影に覆われ、何事かと全員が上空に視線を向けると、そこには鮫の形を模した巨大な船が浮かんでいた。その光景を確認したリル達は驚き、すぐに船首の方に立っている人物に気付く。



「皆さ〜ん!!無事ですか!?まだ生きてますか!?」

「きゅろろ〜(←手を振る)」

「ぷるるんっ(←船長風の帽子を被っている)」



中庭の上空に突如出現した飛行船に乗り込んでいたのは今まで姿を見せなかったリリスとサン、そしてクロミンが立っていた。その姿を見て全員が驚くが、リリスは即座に船員に命じて飛行船を下ろす様に命じた。



「悠長に話している場合ではなさそうですね、船を下ろしてください。全員乗せたらすぐに離陸しますよ!!」

「へいっ!!」

「野郎ども、着地だ!!」

「梯子を用意しろ!!」

「急げっ!!もたもたするな!!」



飛行船の船員は小髭族と巨人族が半々に閉められ、彼等はリリスの指示の元、飛行船をすぐに中庭へ向けて移動させる。王城が完全に崩壊する前に全員を乗せるため、飛行船は着地した。



「ほら、皆さん!!早く乗って下さい!!急がないと押し潰されますよ!!」

「リリス殿!!飛行船が完成したのでござるか!?」

「その一歩手前です!!試運転をしようと飛行船を飛ばしていたら、急に王城から馬鹿でかい刃が出てきたから何事かと思ってきたんですよ!!」

「そういう事か……助かったぞリリス!!さあ、皆早く乗るんだ!!」

「急げ!!もう時間はないぞ、さっさと乗れ!!」

「は、はい!!」

「本当に船が空を飛ぶなんて……信じられない」

「流石はリリス軍師だ!!」



着陸した飛行船にすぐに中庭に避難していた者達が乗り込み、梯子や縄を利用して船上に乗り込む。城が完全に崩壊する前に全員が脱出するため、急いで回収が行われた。


船には力自慢の巨人族や小髭族が乗り込んでいた事が幸いし、使用人や新兵の場合は彼等が用意した縄梯子に掴まらせた後、無理やりに縄梯子を引っ張って船に乗り込ませる。



「ほら、もう少しだ!!力を込めろ!!」

「国を救ってくれた恩を返すんだ!!」

「うおおおっ!!」

「くぅっ……た、助かったよ」

「ありがとう……」

「もう大丈夫なのね……?」



飛行船の乗員には巨人国から派遣された人材も多く、彼等は巨人国を支配していたギガンから救ってくれた恩を返すため、全力を注ぐ。そのお陰で次々と中庭に集まった者達は救助出来たが、最後にリル達が残る。



「よし、後は拙者たちだけでござる」

「うむ、これで船を飛ばせば……ちぃっ、また来おったか!!」

『ウアアアアッ!!』



中庭に集まった人間の生気に反応し、城内からアンデッドの大群が押し寄せる。その光景を見てリル達は身構え、全員の避難が終わるまでアンデッドを抑えつける必要があった。



「くっ、まだこれだけの数が残っていたのか……」

「皆、先に行くのじゃ!!ここは儂が抑えよう!!」

「駄目です、族長!!族長だって先ほどから戦い続けてもう限界のはずです!!これ以上に力を使えば……!!」



カレハは緑刃刀と芭蕉扇を構えて皆を守ろうとするが、すぐに森の里の戦士が彼女を止める。ここまでの戦闘でカレハも魔力を大分消耗しており、これ以上に戦闘を続ければ命はない。


だが、ここでアンデッドを抑えなければ船に乗り込む可能性も高く、これ以上に重量が増えれば船が離陸できない可能性もある。そのためには誰かが残ってアンデッドの注意を引く必要があった。



「ええい、邪魔をするな!!儂以外に誰がこ奴等の相手を出来ると思っている!?」

「カレハ殿、我々のためにそこまでする必要はありません!!ここは私が囮になって……」

「いや、拙者が残るでござる!!」

「駄目だ!!ここまで来て誰かを犠牲にして生き残るなど許さないぞ!!全員で生き残るんだ!!」

「しかし、他に方法が……」

「ふっふっふっ……お困りの様ですね」



誰がアンデッドを引き付ける囮役として残るか話し合う中、その様子を船上から聞いていたリリスは不敵な笑みを浮かべる。その態度に全員が訝し気な表情を浮かべるが、リリスは船員に命令を下す。



「遂にあれの出番です!!さあ、砲門を開いて下さい!!これが完成版魔導大砲ですよ!!」

『はっ!!』



リリスの言葉を聞いた途端、即座に船員達は飛行船の砲台へと移動し、飛行船の各所に設置された「魔導大砲」を構えた。

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