第805話 ムラマサVSカグツチ

――妖刀ムラマサはギガンとの戦闘にて壊れてしまったが、その後にレアによって修復された。リルは聖剣ではなく、妖刀を装着する理由は彼女は剣よりも刀の方が性に合っているからだった。


復活を果たした妖刀ムラマサを手にしたリルは玉座の間から出てくると、ライオネルと対峙するホムラの姿を確認する。外見は剣の勇者であるシュンにしか見えないが、即座に彼が手にしている魔剣を目にした途端、リルは動き出す。



「はああっ!!」

「何っ!?」

「女王陛下!?」



ライオネルとホムラの間にリルは割り込むと、彼女はムラマサを振りかざす。その結果、ムラマサとカグツチの刃が触れ合い、激しい金属音が鳴り響く。


並大抵の武器ならばカグツチの刃に触れた時点で溶けてしまうが、同じ妖刀であるムラマサは簡単に溶ける事はなく、逆に弾き返す。そこからリルはホムラと何合も打ち合い、互いの妖刀を打ち合う。



「この感じ……ムラマサか!!」

「随分と雰囲気が変わったな……剣の勇者!!」



リルはホムラと打ち合いながらも怒鳴りつけ、変わり果てた剣の勇者の姿に怒りを抱く。元々リルは剣の勇者であるシュンには良い感情を持っておらず、仮に相手がレアの知人であろうと手加減するつもりはない。


ホムラはリルが所有するのがカグツチと同列に扱われているムラマサだと知ると、笑みを浮かべた。自分が持つ妖刀と彼女が持つ妖刀、どちらが優れているのか競う良い機会だった。



「面白い!!お前も妖刀使いか……なら、俺とお前の妖刀、どちらが優れているか思い知らせてやる!!」

「舐めるな!!」

「リル女王、そいつは危険だ!!油断するな!!」



互いに刃を交わしながらリルとホムラは動き回り、その後をライオネルが追う。だが、流石に2対1は不利だと判断したのか、ホムラはカグツチを振りかざすと広範囲に黒炎を放つ。



「邪魔をするな!!」

「うおっ!?」

「大将軍!?」



ホムラが妖刀を振り払った瞬間、通路内に黒炎が走るとまるで通路を塞ぐように炎の壁と化す。黒炎によって阻まれたライオネルは加勢する事が出来ず、更にホムラは反対側にも黒炎を放ち、通路を遮断した。



「さあ、これで邪魔者はいなくなった……どちらの妖刀が優れているか試そうか!!」

「面白い……ならば、見せてやる!!」



ムラマサは切りつけた相手の魔力を奪う能力を持ち、その能力を生かしてリルはホムラに切りかかる。普通ならば刃が触れた時点で大抵の武器は溶けてしまうにも関わらず、ムラマサが溶かされない理由はカグツチの黒炎でさえも吸収する力を持っていた。


刃同士が重ね合う度に黒炎が弾け、カグツチが生み出す黒炎をムラマサは吸い上げる。だが、本来ならばその吸い上げた魔力はリルに流れ込むのだが、彼女はあまりにも膨大な魔力に彼女は汗を流す。



「はあっ、はあっ……くっ!?」

「どうした?顔色が悪いぞ?俺の魔力を吸い上げて倒すつもりだったんだろうが、どうやらそれは無理そうだな」

「な、舐めるな!!」



カグツチから魔力をいくら吸い上げてホムラの態度は変わりはせず、彼は先ほどから黒炎を放っているにも関わらず、疲れている様子がない。いくら勇者とはいえ、全く疲れた様子を見せないホムラにリルは戸惑う。


厳密に言えばホムラもカグツチを使用する度に魔力を消耗している事は間違いない。だが、彼の場合は普通の肉体ではなく、勇者であるシュンの肉体を持っている。シュンの肉体からいくら魔力を吸い上げようと憑依しているホムラに大きな影響はない。肉体がどれだけ負荷を与えてもそれを操るホムラに負荷は掛からない。



「さあ、どうした!!ムラマサの力はこんな物か!!」

「ぐうっ……うあっ!?」



先ほどから魔力を吸い続けてきたリルだったが、限界が訪れたのか後ろに押し飛ばされてしまう。どれだけ魔力を吸い上げてもホムラは疲れる様子を見せる事はない事にリルは冷や汗を流し、同時に鼻血を流す。


大量の魔力を吸い上げればリルの身体にも大きな負担が掛かり、肉体に抑えきれない程の魔力を送り込まれれば無事では済まない。吸い上げた魔力を発散させる方法があれば話は別だが、生憎とリルにはそんな方法はない。



(腐っても勇者か……このままではまずい、どうすればいい?)



リルはムラマサに視線を向け、幾たびも黒炎を吸収したせいか刃に熱が宿り、限界が近い。このまま無理に使用し続ければムラマサの方が先に壊れてしまう。



「さあ、これで終わりだ!!」

「ぐっ……舐めるな!!」



カグツチを振りかざしたホムラに対してリルは踏み出すと、互いの刃を重ね合わせる。だが、その直後にムラマサの刃に亀裂が走り、それを見たリルは目を見開く。



「どうやらここまでの様だな……死ねっ!!」

「ぐあっ!?」



ホムラは刃に亀裂が走った事で隙を見せたリルを蹴飛ばし、彼女は後方へと吹き飛ぶ。巨漢のライオネルでさえも吹き飛ばす彼の膂力で蹴飛ばされたリルは後方へと吹き飛ばされ、壁に激突してしまう。

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