第802話 善戦、しかし……
「剣舞っ!!」
「ぎゃああっ!?」
「あがぁっ!?」
「いぎゃああっ!?」
ハンゾウがアンデッドを切り伏せる度にアンデッドは肉体が崩れ去り、灰と化して消えていく。その光景を見ていた他の者達も奮起し、一気に形成が逆転した。
「うおおおっ!!負けてられるかぁっ!!」
「この国を守るのは俺達だぁっ!!」
「持ち堪えれば必ず勇者様が助けに来てくれる!!」
「うおりゃああっ!!」
白狼騎士団の面々を筆頭に城内の兵士達もアンデッドの大群に切りかかり、次々と打ち倒していく。中庭の方で激戦が繰り広げる中、中庭の方にて竜巻が発生した。
「うわっ!?」
「な、何だ!?」
「この風は……!?」
『ぎゃあああっ!?』
竜巻が発生した途端にアンデッドの大群は吹き飛び、他の者達は巻き込まれないように地面に伏せる。アンデッドの大群を取り囲むように出現した竜巻に全員が驚いていると、ここで芭蕉扇を手にしたカレハが現れる。
彼女は芭蕉扇を振りかざしながらアンデッドの大群に向けて衝撃波を放ち、次々とアンデッドを蹴散らす。強烈な風圧を幾度も浴びせる事でアンデッドを壁や地面に叩きつけ、動けない状態にまで追い込む。
「ふんっ!!」
「ぎゃうっ!?」
「あがぁっ!?」
「うがぁっ!?」
カレハが芭蕉扇を振りかざす度にアンデッドの大群は風圧によって叩きのめされ、やがて竜巻が縮小化していくと、内部に閉じ込められたアンデッドの大群はミキサーの如く強烈な風圧によって引きちぎられていく。
「す、凄い……なんて力だ」
「流石は森の里の族長……」
「あれほどのアンデッドを一瞬で……」
たった一人でカレハはアンデッドを駆逐すると、彼女は芭蕉扇を振るのを辞めた途端、竜巻が拡散して残されたのは無惨な死骸と化した大量のアンデッドが中庭を埋め尽くした。その様子を見てカレハはため息を吐くと、チイたちに振り返って状況を確認する。
「チイ殿、これはいったい何事じゃ?どうしてアンデッドがこんな場所に……」
「わ、分かりません。急に転移台が存在する部屋から現れたらしく、我々も事態を把握していません」
「転移台……あの遠方から一瞬で移動できる魔道具の事か」
カレハはチイの話を聞いてアンデッドの大群に視線を向け、この時に彼女は違和感を抱く。それはアンデッドが所持していた装備品の中に見覚えがあるデザインの鎧や兜がある事に気付き、彼女はそれを拾い上げて驚いた表情を浮かべた。
「こ、この装備は……!?」
「カレハ殿?どうかされましたか?」
「……間違いない、この者達は死の森で死んだ者じゃ!!」
「えっ、死の森……?」
死の森という単語を告げたカレハに他の者達は呆然とするが、ここでチイたちだけは死の森の事を思い出す。少し前に一時期だけレアが帰還した際、彼が受けた修行の内容を教えてもらった。
先日にレアは他の二人の勇者と共に死霊が住み着く「死の森」と呼ばれる場所へ送り込まれ、そこで一晩中現れるアンデッドの大群と戦い続ける事が修行の内容だったという。
だが、修行の途中で地中に封じられていた地竜が復活を果たし、結局はアンデッドの大群は地竜によって飲み込まれたと思われたが、カレハは城の中に現れたアンデッドの正体が死の森に存在するはずのアンデッドだと見抜く。
「何故、こ奴等がここに……まさか、死の森から引きずり出してきたというのか!?」
「カレハ殿、それはいったいどういう……」
「待て、団長!!……様子がおかしくないか?アンデッドが出て来なくなったぞ?」
チイはカレハに質問しようとした時、ここで白狼騎士団の第一部隊隊長であるオウソウが間に割り込む。彼は転移台から続々と出現していたアンデッドの大群が途絶えた事に疑問を抱く。
城内に乗り込んだアンデッドは全てカレハによって始末されたのは間違いなく、もう打ち止めなのか他のアンデッドが現れる様子がない。その事に気付いた他の者達も不思議に思うと、ここでチイは更に疑問を抱いた。
「そういえば……リル様はどうした!?ガーム将軍はどこにおられる!?リリスは何をしている!?」
アンデッドが場内を襲撃したというのに3人の姿が見えない事に気付いたチイは嫌な予感に駆られると、その予感はすぐに的中した。それは王城の玉座の間の方から轟音が鳴り響き、城中の窓ガラスが割れる程の振動が伝わる。
「うわっ!?」
「な、何だ!?」
「まさか……リル様!!」
「チイ団長!?皆、団長に続け!!」
玉座の間の方にて何かが起きた事は間違いなく、即座にチイは玉座の間の元へ駆け出す。他の者達も彼女の後に続き、いったい何が起きているのかを確かめようとした――
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