第799話 帝国と巨人国の危機
「はああっ!!」
「うおおっ!!」
大量のアンデッドを蹴散らしながら二人は部屋の中に入り込むと、そこには光を放ち続ける転移台が存在し、次々とアンデッドが転移される光景が広がっていた。それを確認した二人は驚き、やはりというべきかアンデッドが召喚される理由は転移台が関係している事が確定した。
光り続ける転移台を確認したアリシアとキニクは何がどうなっているのかは不明だが、この転移台を何とかしない限りはアンデッドが送り込まれると判断し、それを止めるために動き出す。
「転移台の真ん中に設置してある魔石を破壊しましょう!!そうすれば止まるかもしれません!!」
「分かりました!!」
『アアアアッ!!』
転移台に接近しようとした二人だったが、次々と転移してくる新手のアンデッドが押し寄せ、その数に二人は転移台へ近づく事が出来なかった。
「くっ……数が多い、このままでは壊せません!!」
「アリシア姫……僕を踏み台にしてください!!」
「踏み台……なるほど、では頼みます!!」
キニクの言葉にアリシアは驚いた表情を浮かべるが、すぐに彼の意図を察すると彼女はキニクの元に向けて駆け出す。そして彼は両手を組みながら待ち構えると、アリシアは彼の組んだ手に踏み込み、大きく跳躍を行う。
フラガラッハで強化されたアリシアの身体能力とキニクの怪力が合わさり、飛び込んだ彼女は天井近くまで上昇すると、上空から転移台へ向けて剣を振り下ろす。
「はああっ!!」
『っ……!?』
転移台の中央に設置されている魔石に向けて聖剣の刃が叩き込まれると、魔石が砕け散ってしまい、直後に転移台の光が収まる。転移台を発動させるには魔石を使用して魔力を吸収させる必要があるため、魔石その物を破壊すれば発動はしない。
既に召喚されたアンデッドは仕方ないが、これで新手のアンデッドは召喚される事はない。残されたアンデッドに対してアリシアは聖剣を振りかざし、兵士達に命じる。
「これでアンデッドは出てくる事はありません!!後は一人残さず、残党を討ち取りなさい!!」
「姫様に続け!!」
「うおおおっ!!」
「この腐れしたいがぁっ!!」
『うああっ……!?』
城内に残されたアンデッドの大群は聖剣を所持するアリシアの活躍によって鎮圧され、事なきを得た。だが、他の国でも送り込まれた転移台の方にて異変が起きていた――
――巨人国の王城の地下ではアンデッドが溢れかえり、その対処のために巨人国の軍隊が動き出していた。他の国々と比べても巨人族で統一された軍隊は世界最強と言っても過言ではなく、圧倒的な力でアンデッドを制圧する。
「ふんっ!!」
「がああっ!?」
「うぎゃっ!?」
「あああっ!?」
大将軍であるダイゴロウが戦闘に立ち、地下から湧き上がるアンデッドを蹴散らしながら転移台が設置されている地下の部屋へと辿り着く。彼は配下の兵士を引き連れながら次々と溢れるアンデッドを打ち倒し、遂に部屋の中へ辿り着く。
王城の地下室では転移台が光り輝き、次々とアンデッドが出現していた。その光景をみてダイゴロウと他の兵士達は冷や汗を流し、何が起きているのか分からなかった。
「大将軍!!やはり、あの転移台とやらがアンデッドを生み出しているようです!!」
「おのれ、ケモノ王国め!!なんてものを送り込んだのだ!!」
「これは奴等の策謀では!?」
「黙らんかっ!!」
ケモノ王国から寄贈された転移台からアンデッドが出現している事が発覚し、その事に兵士達は怒りを抱くが、ダイゴロウは今回の一件がケモノ王国の仕業ではないと考えていた。
「ケモノ王国の者達はこの国の恩人、その恩人を疑うか!?」
「し、しかし……現にアンデッドが召喚されているではないですか!!」
「馬鹿者!!今までの事を思い出せ、これは恐らくはケモノ王国の仕業に仕立て上げた魔王軍の仕業だ!!奴等にこの国がどれだけひどい目に遭ったのかを忘れたか!?」
「そ、それは……」
ダイゴロウは自分や兵士の家族を救ってくれたレアを筆頭にケモノ王国から訪れた者達の事を信じ切っており、決して疑わなかった。だいたいケモノ王国が巨人国に攻撃を仕掛ける理由がなく、そもそも国を支配するつもりならば先日に王城に乗り込んできたときに成し遂げているはずだった。
今現在のケモノ王国の勢力はレアという存在が居る事から世界一と言っても過言ではない。実際にケモノ王国がこの国を本気で支配するつもりならアンデッドなどわざわざ召喚せず、直接出向く方が早い。
「ともかく、あの転移台を止めるぞ!!話に聞く限りはあの転移台の真ん中に設置されている魔石を破壊すれば止まるはずだ!!」
「は、はい!!」
「行くぞっ!!我々の国は我々で守るのだ!!」
『うがああああっ!!』
巨人国の軍隊とアンデッドが激突し、王城の地下にて激しい攻防が繰り広げられた――
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