第797話 転移台の異変
「くそ、何がどうなってんだ!!おい、行くぞ卯月!!」
「う、うん!!このお菓子を食べたら行くね!!」
「いいから早く来いよ!!」
ヒナを置いてシゲルは先に行くと、転移台が設置されている陣幕まで向かう。転移台で起動できない状態であれば王都へ戻る事も出来ず、当然だが帝国へはすぐに戻れない。
転移台が起動できない事態など今までに一度も起きた事がなく、何が起きたのか思いながらシゲルは向かうと、何故か人の悲鳴が彼の耳に届く。
「ぎゃあああっ!?」
「ひいいっ!?」
「ど、どうして……うわぁっ!?」
「おい、何があった!?」
聞こえてきた悲鳴にただ事ではないと判断したシゲルは悲鳴のした方向に向かうと、そこには現れるはずがない存在が兵士達に襲い掛かっていた。
――アアアアアアッ!!
大量のアンデッドが兵士達に襲い掛かり、兵士達は必死に応戦するが普通の武器で彼等を倒すのは困難だった。聖属性の魔力を宿す武器か、あるいは聖水などの類の武器以外ではアンデッドに対抗は出来ない。
急遽現れたアンデッドの大群に兵士達は必死に応戦するが、突如として現れるはずのないアンデッドの襲撃に混乱し、指揮者もいない事で劣勢に陥る。
「ど、どうしてアンデッドがここに!?」
「く、くそっ……こいつら、普通のアンデッドじゃないぞ!?」
「やばい、日が暮れる!!そうしたらこいつらは……うわぁっ!?」
『アアアアッ!!』
現在の時刻は夕方を迎えようとしており、日が沈み始めていた。日の光が強い時間帯はアンデッドも行動は出来ないが、太陽が沈みかけている今ならば活動できるらしい。
仮に完全に太陽が沈んだ場合、夜を迎えればアンデッドは本来の動きを取り戻す。聖属性の魔法で浄化するか、あるいは火属性の魔法で焼き尽くす以外に倒す方法はない。シゲルは兵士達を救うため、動き出す。
「お前等無事か!!下がってろ!!」
「ゆ、勇者様!?」
「駄目です、こいつらには普通の攻撃は……」
「そんなもん、分かってるんだよ!!」
先日に死の森で大量のアンデッドと交戦した事もあるシゲルはアンデッドの弱点も承知済みだが、この状況下で兵士を見捨てる事は出来なかった。例え王国の兵士であろうと人が殺されそうな場面を見て放っておけるはずがなく、彼は目にも止まらぬ速度で蹴りを繰り出す。
「連脚!!」
「があっ!?」
「ぶふぅっ!?」
「あぐぅっ!?」
超高速の蹴りをシゲルは近づいてきた3体のアンデッドに仕掛け、適格に急所に蹴り込む。痛覚は存在しないアンデッドだが、急所を打ち込まれれば反射的に反応してしまい、隙は生まれる。
「旋風脚!!」
「ぐえっ!?」
「があっ!?」
「おがぁっ!?」
続けてシゲルは身体を回転させながら跳躍を行い、自分の周りに存在するアンデッドを蹴り飛ばす。敵の数が多いので攻撃範囲が広い戦技を繰り出し、更に続けてシゲルは得意とする戦技を発動させた。
「こいつでどうだ……発勁!!」
『っ……!?』
地面に着地したシゲルは両手を地面に押し付けると、発勁の戦技を発動させ、地面に強烈な衝撃を与える。その結果、地中の岩盤まで影響を与えたのか、巨大な岩が地面から出現するとアンデッドを押し潰す。
この修行の間に覚えたシゲルなりの必殺技の一つであり、大岩がアンデッドを押し潰す姿にケモノ王国の兵士達は歓声を上げる。
「す、凄い!?」
「あんな数のアンデッドたちを一瞬で……」
「流石は帝国の勇者様だ!!」
「ふうっ……これで大分始末で来たな」
汗を滲ませながらもシゲルは多いわで潰したアンデッドの大群に視線を向け、全てのアンデッドを始末する事は出来なかったが、大部分は倒す事は出来た。
この調子ならば後は兵士達だけでも何とかなると思われた時、シゲルは光に照らされる。何事かと彼は光が放たれる方向に視線を向けると、そこには陣幕が存在した。
「あの陣幕は……!?」
「く、くそっ!!まただ!!またアンデッドが現れるぞ!!」
「勇者様、お気を付けください!!何故か分かりませんが、転移台からアンデッドが転移してきています!!」
「何だと!?どういう事だ!?」
「わ、我等にも分かりません!!この転移台は王都へ繋がっているのに……」
転移台からアンデッドが送り込まれているという言葉にシゲルは動揺し、やがて陣幕の中から再びアンデッドの群れが出現する。いったい陣幕の中で何が起きているのか、それを調べるためにはシゲルはアンデッドの群れと対峙し、戦うしかなかった。
「くそ、卯月や霧崎はまだか!?」
「シゲル様、お気を付けください!!こいつら、先ほどとは様子が違います!!」
『ウガァアアアアッ!!』
現れたアンデッドは今度は人間だけではなく、獣人族や巨人族のアンデッドも紛れ込んでおり、どんどんと転移台から様々な種族のアンデッドが送り込まれてきた――
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