第791話 各国会議
――地竜の討伐から数日の時が経過すると、帝国の元に世界各国の王が集まり、会議を行う。会議の議題は当然だが魔王軍に関する事であり、帝国の代表としてアリシア、ケモノ王国からはリル、海底王国からはセリーヌ、巨人国からは新たに国王に就任したジャイが訪れる。
帝城の一室にて世界四大国の代表が集まり、彼等は全員が魔王軍によって国に大きな被害を受けていた。特に巨人国の場合は数か月の間も魔王軍の幹部によって虐殺が行われ、帝国に至っては元大臣のウサンによって何年、下手をしたら何十年も利用されていた。
海底王国も海龍リバイアサンが復活したせいで危うく大惨事を引き起こしかけ、ケモノ王国に至っては王都の襲撃や農場も被害を受けている。そのため、本格的に魔王軍を壊滅させるために国同士が協力する必要があった。
「今回の議題は魔王軍の殲滅……そのためには国同士の協力が必要不可欠だ」
「その通りです」
「同感ですね」
「ああ、異論はない」
リルの言葉に各国の王は頷き、皇帝代理であるアリシアも同意した。現在の帝国は彼女が取り仕切っており、倒れた皇帝の代わりに彼女が帝国の実権を握っている。
「しかし、具体的に協力すると言っても何から始めるのかが問題だ。まずは各国で魔王軍の被害状況、並びに情報の共有を行おう」
「これまでの魔王軍の行動を考えても自国から内通者が存在するのは確かです。しかし、それが誰かを調べる時間はありません」
「魔王軍が次に行動する前に各国で協力をする必要があります。そこで今後はケモノ王国が管理する転移台を貸してもらい、各国の交流を増やす必要があります」
「あの魔道具は本当に素晴らしい……しかし、どうやってあんな物を作り上げたのですか?」
ジャイは帝国へ移動する際に転移台を使用しており、どれほどの距離が存在しようと移動に必要な魔力を蓄積させた魔石を用意すれば一瞬で転移できる。転移する度にそれなりの魔石を消耗するので乱用は難しいが、国家間を一瞬で移動できるのは便利だった。
今後は各国の交流を増やし、それぞれの国が協力体制を取る必要があるとリルが主張すると、他の3人も同調する。今までは国家間同士で諍いはあったが、魔王軍という全ての国の共通の敵が現れた事により、力を合わせなければならなかった――
――同時刻、地の魔王の尋問が行われていた。彼は瓶の中で閉じ込められた状態でリリスとカレハの間に挟まれ、彼女達によって尋問を受けていた。
「ほらほら、魔王軍の情報を全て儚いとこの水を中に入れますよ」
『や、止めろっ!!』
「いい加減に話さぬか、この馬鹿者が!!また身体を粉々にしたいか?」
『アアアアアッ!?』
カレハが掌を押し付けると、まるでミキサーの如く瓶の中で竜巻が発生し、地の魔王は肉体を維持できずに崩壊して内部に蓄積されていた死霊石が瓶の中でピンボールの如く弾きまわる。
魔王軍の中で唯一捕獲に成功した存在のため、なんとしても情報を吐かせる必要があった。だが、いくら脅しても地の魔王は何も吐かず、どんな拷問をしても砂の肉体はすぐに再生してしまう。
「たくっ、強情ですね!!普通の生物だったらレアさんの魅了で喋らせるのに」
「何、いくら肉体が不死身でも精神は不死身ではない。意識が明確な状態で復活したのを後悔させてやろう」
『や、止めろぉおおおっ!!』
なまじ精神が完全に蘇った状態で復活したため、度重なる拷問に地の魔王の精神は消耗し、その様子をカレハとリリスは嬉々とした表情で見つめる。意外と二人の性格は似ており、二人の拷問に地の魔王は連日苦しめられる事になる――
――その一方では他の者達も魔王軍との戦闘に備えて各自が準備を行い、特に聖剣を与えられた者達は鍛錬に励む。今回の魔王軍はかつて王都で対峙した魔王軍の幹部よりも手強く、ギガンの場合は結局はレアがいなければ勝てなかった。
かつて激戦を繰り広げた魔王軍幹部も十分に厄介な存在だったが、剣の魔王が率いる新生魔王軍も油断ならぬ相手であり、しかも敵の中には剣の勇者も混じっていると思われた。姿を消した勇者が敵に回った可能性は高く、今回の相手は魔王と勇者である事を意識して訓練に励む。
「はああっ!!」
「せいっ!!」
「うにゃっ!!」
レアが制作した聖剣フラガラッハを身に付けたチイ、ハンゾウ、ネコミンの3人は連日に鍛錬に励み、各々が得意とする武器を扱う。フラガラッハの一番の優れた点は身に付けるだけで攻撃力が強化される点であり、無理にフラガラッハを使用する事に拘る必要はない。
これまでに3人はフラガラッハを普段から常備しない理由は性能が優れすぎるためであり、下手に扱うと間違いを起こす可能性があった。だからこそ普段はフラガラッハは大切に保管しているが、魔王軍が動き出す可能性がある以上は保管などしていられない。
来るべき魔王軍との決戦に備え、各自が行動を開始する中、森の民の元で修行を受けている3人の勇者にも変化が起きていた――
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