第789話 竜殺しの大剣
――地竜の上空には巨人族でも手に余る程の重量を誇る「ドラゴンスレイヤー」を身に付けたレアが存在した。先日、ギガンに強奪されたドラゴンスレイヤーは回収後に巨人国に返還したにも関わらず、何故かレアの手元に存在した。
すぐにレアの能力の事を知っているカレハはこの状況下でレアが「ドラゴンスレイヤー」を生み出した事を知り、何か適当な道具を利用してこの世界に二つと存在しない伝説の大剣を作り出した事に気付く。
「うおおおおっ!!」
『オアッ――!?』
レアはドラゴンスレイヤーを振りかざすと、その重量を利用して地竜の頭部に向けて振り下ろす。先のシゲルの攻撃によって地竜の頭部には亀裂が走っており、その状態で更に超重量のドラゴンスレイヤーを叩きつければ無事では済まない。
「うおりゃあああっ!!」
『アガァアアアアッ!?』
気合の雄叫びと共にレアがドラゴンスレイヤーを地竜の頭部に向けて振り下ろし、その刃は亀裂が走った地竜の頭部を砕き、血飛沫が舞う。
外見はいくら岩石の塊のように見えてもロックゴーレムと違って地竜は生物である事に変わりはなく、当然だが頭を破壊されれば無事では済まない。レアの渾身の一撃で地竜は頭部を砕かれ、やがて力を失ったように倒れ込む。
「……ふう、助かった」
「す、すげぇっ……」
「レア君、格好いい……」
レアが地竜を倒した光景を見て地上に落ちたシゲルは戦士達の肩を借りながらも唖然とした表情を浮かべ、ヒナの方は頬を赤らめて何故か心臓の鼓動が高鳴る。その様子を見てカレハも安堵するが、ここで彼女はレアの手にしたドラゴンスレイヤーに視線を向ける。
「何故、あの大剣を……?」
この状況下でどうしてレアが普段から使い慣れている「フラガラッハ」あるいは「エクスカリバー」などの聖剣を使用しなかった事に彼女は疑問を抱く。
ドラゴンスレイヤーも確かにこれらの聖剣に匹敵する知名度を誇る武器だが、正確に言えばドラゴンスレイヤーは聖剣には分類されない。この聖剣に関しては勇者は直接的に製作には関わっておらず、勇者の武器として扱われていた時期もあるが厳密に言えば聖剣ではなかった――
――地竜を討伐し、合流したレア達はとりあえずは治療を受ける。最もレアの場合は自力で身体を動かしてステータスをいじって無理やりに怪我を治したらしく、治療の必要はなかった。
他の二人の勇者に関してもすぐにレアがステータスを改竄し、治療を行う。幸いにも森の戦士達も負傷者は少なく、万が一の場合に備えて全員がリリスの作り出した上級回復薬を常備していたので助かった。
「レア様、どうしてドラゴンスレイヤーを利用されたのですか?」
「え?ああ、前に巨人国の人たちから聞いた話を思い出してさ……」
「思い出した?」
死の森から外へと移動中、レアはカレハに尋ねられてどうして地竜との戦闘にてドラゴンスレイヤーを作り出し、それを利用したのかを問われる。その問いかけに対してレアは巨人国で聞いた話を語る。
「巨人国の人にドラゴンスレイヤーを返す時、ドラゴンスレイヤーの名前の由来も教えてもらったんだ。実はこの剣が竜殺しの異名を誇るほどに竜種には有効的な効果を持っているとか……」
「有効的な効果?」
「そう、解析してみたら本当に凄い性能を持っていたよ」
レアは遠目で地竜に突き刺さったドラゴンスレイヤーに視線を向け、あまりに大きすぎるので持ち運ぶ事も難しく、この場所へ放置する事にした。一応は地竜の元には見張りを残しており、後で回収するつもりだった。
距離は存在するがレアは「遠視」の技能を発動させて地竜の額に突き刺さった「ドラゴンスレイヤー」に視線を向けると、解析の能力を発動させた。
――ドラゴンスレイヤー――
能力
・竜殺し
・破砕
詳細:別名は「竜殺しの大剣」と称される大剣。竜殺しの名の通りに竜種に属する全ての魔物に対し、有効的な力を発揮する。また、破砕の効果によって大剣で斬りつけられた物体は砕かれやすくなる
―――――――――――――
解析を使用してドラゴンスレイヤーを確認した際、レアは竜種との戦闘の際はこの大剣が最も役立つ武器になると確信した。流石は勇者のために制作された武器でもあり、その性能は聖剣にも劣らない。
竜殺しの大剣という異名だけは誇り、本来はアンデッドと化した存在は身体を焼き尽くすか、あるいは浄化の魔法で体内の闇属性の魔力を消さなければ倒す事は出来ない。だが、ドラゴンスレイヤーを頭に叩き込んだ途端に地竜は力を失い、絶命した。
この事から竜殺しの効果はアンデッドと化した竜種にも有効的である事が判明し、もしもドラゴンスレイヤーを手にしていたら雷龍や海龍との戦闘でも役立っていただろう。レアは新しく手に入れた武器に魔王軍との戦闘で役立つだろうと考えていた――
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