第786話 地竜討伐戦
「ふうっ……流石に疲れたよ〜」
「お、おう……お疲れさん」
「大分数を減らしたね……ていうか、もう敵が見えないよ」
流石に魔力を使い果たしたのかヒナは疲れた様にへたり込むと、レアとシゲルは周囲の状況を確認して冷や汗を流す。先ほどまでは辺り一面に生えていた木々が消え去り、灰と化していた。
周辺一帯を焦土と化す程の威力を誇る広域魔法にレアは圧倒され、仮に聖剣を所持していたとしてもレアにはこんな真似は出来ない。ヒナの魔法は聖剣級の攻撃力を誇り、魔術師としてはヒナは世界の中でも最高の素質を持っている事が伺えた。
「これで逃げやすくなったな。問題はあのデカブツだが……」
「明らかに俺達を狙ってるね……」
アンデッドを食らって全身に呪詛が回った地竜はレア達に視線を向け、先ほどのヒナの広域魔法を警戒してか立ち止まっていた。その様子を見てレアは困り果て、シュンもどうすればいいのかと戸惑う。
流石に山の様な巨体を誇る生物との戦闘となると準備も必要であり、生憎と今のレア達の装備ではどうしようも出来ない。文字変換で適当な道具を作り出すにしても限度が有り、今ここで聖剣を作り出したとしても倒せる保証はない。
(アンデッド系の魔物ならエクスカリバーが一番友好的だけど、どうするかな……)
エクスカリバーを手持ちの道具で作り出して地竜に挑むという手段もあるが、仮に倒しきれなければシゲルとヒナの身が危ない。残念ながら拳の勇者であるシゲルでは体格差があり過ぎて当てには出来ず、ヒナも魔力を使い果たしてしまった。
「二人とも、ここは俺が引き受けるからその間に森の外に逃げて……カレハさん達と合流すれば大丈夫なはずだから」
「お、おい!!まさか、一人で挑むつもりか?」
「む、無茶だよ〜……一緒に逃げようよ」
「逃げたいけど、あっちは逃がすつもりがなさそうだよ」
――オァアアアアッ!!
地竜は動き出すと一歩踏みしめる事に枯れ木をなぎ倒し、土煙を舞い上げながら接近していく。踏み出す度に地面に振動が伝わり、まともに立つ事もままならない。
地竜が近付く前にレアは慌てて手持ちの道具から聖剣を作り出そうとしたが、地面が揺れるせいで指がぶれて文字が上手く書けない。
(くそっ!?しまった……正確に文字を書かないと変換できない!!)
解析と文字変換の能力で道具を別の物体に作り替える場合、画面上に表示された名前を別の文字に変換する必要がある。この時にレアは人差し指で新しい文字を書き込むのだが、ちゃんと文字を書かなければ変換は出来ない。
(まずい、足場の揺れが激しすぎる……こうなったら!!)
地面の振動のせいで身体が揺れて上手く文字を書き込む事が出来ず、仕方なくレアは空中に視線を向けると、大きく跳躍を行う。久々に「瞬動術」を発動させてレアは空中に跳躍すると、ここならば地竜の影響を受けない。
(よし、空中なら……!!)
浮揚している間にレアは文字を書き込もうとした瞬間、ここで地竜は大きな顎を外れかねない角度まで口を開く。その様子を見てレアは嫌な予感を覚え、その予感は即座に的中した。
――オォオオオオオオオッ……!!
地竜の口元から強烈な咆哮が放たれると、周囲に衝撃波と化して広がっていく。そのあまりの強烈な衝撃波に死の森の枯れ木は吹き飛び、空中に跳んでいたレアも巻き込まれる。
地上に存在したシゲルとヒナも共に巻き込まれ、周辺に存在した全ての物体を巻き込むほどの勢いで衝撃波は拡散された――
(――何が起きた……?)
意識を取り戻したレアは瞼を開くと、最初に視界に入ったのは大量の星空であった。すぐにレアは身体を起き上げようとしたが、どういうわけか力が上手く入らない。
どうにか首を首だけでも動かして周囲の状況を確認しようとすると、どうやらレアが倒れている場所は地面の上ではなく、複数の枯れ木が重なるように倒れ込んでおり、その上に落ちてきたらしい。
(枯れ木がクッションになって助かったのか……?)
身体を動かそうとしても感覚がマヒしており、上手く身体を動かせない。この状態で地竜に襲われたらひとたまりもなく、どうしようもない。
(くそっ……さっきのは地竜の
火竜が火炎の吐息を吐くように地竜の場合は衝撃波の如き大音量の咆哮を放つ力を持っており、もしもレアが「防音」の技能を身に付けていなければ鼓膜も敗れていたかもしれない。
どうにかレアは身体を起き上げるが、この際に彼の視界に地竜が動く姿が見えた。地竜はレアの存在に気付いていないのか、あるいは無視をしているのかは不明だが、彼を食べようともせずに別の方向へ移動していた。
(離れていく……どうして?)
自分を食べるのならば絶好の機会にも関わらず、どうして地竜が自分を狙わないのかとレアは不思議に思った時、この時に地竜の肉体に強烈な風圧が襲い掛かった。
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