第779話 待っていたよ勇者君

「ふうっ……どうにか城に辿り着けたな」

「もう疲れたよ〜……あれ?兵士の人たちがいないね、どこに行ったのかな?」

「…………」



王城の城門の前に辿り着いた3人は普段ならば閉じられている城門が開かれている事、そして見張りの兵士が存在しない事に気付く。


普通ならば見張りも無しに城門が開かれたままで放置されるなど有り得ない事だが、3人は城門を潜り抜けると、直後に城門が閉じられる。



「うおっ!?な、何だ?」

「急に閉まっちゃったよ!?」

「さあ、皆がもう待ち構えてるよ」

「皆?」



レアの言葉に二人は戸惑うが、城の中庭の方に移動を行うと、そこには大勢の騎士と森の民の戦士が集まっており、更に武装したリル達の姿も存在した。



「待ちかねたぞ、勇者諸君!!よくぞここまで来たな!!」

「な、何だ?あんた、確かこの国の女王様だろ?」

「え、え、どういう事!?」

「やっぱり、こうなったか……」



中庭にて待ち構えていたリル達を見てもレアは驚かず、他の二人は混乱するが、白狼騎士団の団長であるチイと副団長のネコミンが前に出ると、3人に向けて剣と鉤爪を構える。



「勇者レア!!それに他のお二方も……今日、我々はここで宣言する!!貴方達に勝負を申し込む!!」

「勝負!?勝負って、どういう意味だよ!?」

「言葉通りの意味……これから私達は全員で3人と戦う。怪我をしたくなかったら早めに降参した方が良い」

「えええっ!?」



唐突な宣言にシゲルとモモは驚愕するが、一方でレアの方は既に準備を整えていた。今回の勝負のためにレアは聖剣を外し、以前に巨塔の大迷宮にて回収しておいたアダマンタイト製の武器を取り出す。


聖剣の類を使用すると下手をすると死人が出るため、それを考慮して今回は双方は聖剣は使用しない。但し、それでも勇者であるレアや他の二人に対抗するため、リルはケモノ王国に滞在する戦力を集めてきた。



「勇者殿、本格的な修行を始める前にまずは実力を見極めさせてもらうぞ」

「いいか、お前達!!相手が隊長だからって油断するなよ!!」

「くくく、こうして勇者殿と戦うのはこの城へ始めてきた時いらいか!!」

「……こうしてまともに刃を交わせるのは初めてか」



森の民の族長であるカレハ、もう既に自分も隊長に昇格したのに未だにレアを隊長と呼ぶオウソウ、更には大将軍のライオネルや元大将軍のガームも訓練に参加していた。



「まさかレアさんとこんな形で戦う事になるとは……リルさん、毒薬の許可を下さい」

「いや、流石にそれはちょっと……」

「リリス殿の毒薬は洒落にならないでござる。ここはせめて痺れ薬程度にするのはどうでござるか?」

「そもそもレアに毒は効かないだろう!!」

「流石はチイ、何だかんだでレアの事はよく知っている」



立場を考えずに女王であるリルも参加するらしく、彼女の傍にはハンゾウ、リリス、チイ、ネコミンの姿が存在する。他にもクロミンを抱えたサンも存在するが、二人とも見学するつもりなのか離れた場所で座っていた。



「きゅろろっ、レア頑張って!!」

「ぷるぷるっ(相手が物足りなかったら僕も変身させて戦おうか?)」

「「クゥ〜ンッ」」



二人の傍にはシロとクロも呑気に座り込んでおり、完全に観戦をするつもりだった。それを確認したレアは頭を掻きながらも他の二人に声をかける。



「よし、二人とも頑張ってね。もしもこれに負けたら修行の内容が倍ぐらいきつくなるからね」

「ええっ!?おい、待てよ!!こんなの聞いてないぞ!?」

「こんなにいっぱいの人と本当に戦うの!?」

「そうだよ」



焦りを抱く二人に対してレアは淡々と告げると、改めてこれから戦う面子に視線を向けた。今回は聖剣の力を借りれないため、どこまで戦えるのかは分からないが、やるだけやるしかなかった。



「二人とも、行くよ!!勇者の力を見せつけるんだ!!」

「ちくしょおおっ!!」

「えええっ!?」



こうして勇者3人とケモノ王国の総戦力の勝負が始まった――







※リル「僕達の戦いはこれからだ!!」( ゚Д゚)ウオオオオッ!!

 カタナヅキ「こら、勝手に終わらすな!!」(;´・ω・)


注意;最終回じゃないです。今日はは1話だけです。

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