閑話 〈その頃の火竜〉
――ケモノ王国内に存在するただ一つだけ存在する大迷宮、その名は「巨塔の大迷宮」と呼ばれていた。名前の通りに巨大な塔の形をした大迷宮であり、ヒトノ帝国の「古王迷宮」よりも難易度は高い。
古王迷宮とは違い、この巨塔の大迷宮は上の階層に移動する事に出現する魔物が強くなり、特に第四階層には竜種である「火竜」が生息していた。この火竜はかつてレア達が討伐した事もあるが、その火竜の中で1匹だけ見逃された個体が存在する。
「シャアアッ!!」
「ゴガァアアアッ!!」
第四階層は密林で覆われているが、その中心部には火山が存在し、そこにはマグマゴーレムと呼ばれる特殊なゴーレムが生息している。そのゴーレムを相手に火竜の子供は単独で戦闘を挑み、鋭い牙や鉤爪でマグマゴーレムを圧倒していた。
「ガアアッ!!」
「ゴガァッ!?」
マグマゴーレムに喰らいついた火竜は見かけによらず凄まじい怪力を誇り、自分よりも大きいマグマゴーレムを首の力だけで持ち上げると、地面に叩き落す。その際にマグマゴーレムの肉体に亀裂が発生する。
火竜に対してマグマゴーレムも発熱させて襲い掛かろうとするが、火竜はマグマの中でも潜り込めるほどの高い熱耐性を持っており、発熱したマグマゴーレムに触れても怯みもしない。
「ガウッ!!」
「アガァアアアアッ……!?」
遂には火竜の子供はマグマゴーレムの亀裂に頭を突っ込み、内部に存在する核を引き抜く。その結果、核を失ったマグマゴーレムの肉体は崩れ始め、ただの溶岩の塊と化す。
「シャアアアッ!!」
マグマゴーレムの核を口にした状態で火竜は咆哮を放ち、勝利の雄叫びを行う。以前にレア達と遭遇した時よりも身体は大きくなっており、毎日の様に激しい戦闘と火属性の純度の高い魔石を食らっていた事で成長していた。
第四階層の主でもある成体の火竜が倒されてから第四階層の生態系は大きく変化し、火山には大量のマグマゴーレムが発生した。もう存在する火竜は1匹しかおらず、もう仲間はいない。
だが、大迷宮では魔物が絶滅する事はあり得ず、どれだけ数を減らそうとその分に強力な魔物が誕生する。この火竜の子供は成体の火竜が死んだときから驚異的な成長力を手にしており、通常ではありえない速度で成長していた。
――そして間もなく、この火竜の元に遂に彼を迎え入れる存在が訪れようとしていた。
※今回の話は読者様のコメントで存在を思い出しました。(;´・ω・)スマン、カリュウ……
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