第768話 伝説の魔道具
「いったいどうやって……」
「……それは貴方の能力で調べてみたらどうですか?解析の勇者殿?」
「くっ!!」
少年の挑発めいた言葉にレイナは苛立ちを抱くが、言われてみれば確かにその通りであり、解析を発動させて少年を調べた。その結果、案の定というべきか少年の肉体も死霊人形なのか解析する事は出来なかった。
しかし、少年自体は解析する事は不可能だったが、少年の身に付けている装備品は別である。少年は灰色のマントを羽織っており、どうやらこのマントが感知系の能力を無効化する効果を持つ事が発覚した。
『見隠しのマント――マントで包んだ物体は周囲の風景に溶け込み、気配感知、魔力感知の効果を無効化し、感じ取ることが出来なくなる』
どうやら少年の能力で身を隠していたわけではないらしく、身に付けている魔道具の効果によってレイナたちは存在に気付けなかったという。もしもカレハが戦士の勘で気づかなければレイナ達は何も知らずに立ち去っていただろう。
「こいつ、見隠しのマントという名前の魔道具を持っている」
「見隠しのマントだと!?伝説級の魔道具ではないか!!」
「私も噂だけは耳にした事がありますが、まさか実在したなんて……!!」
「そういう事か……道理で今まで我々の行動が読まれていると思ったが、その魔道具を使っていたのか!!」
「流石は解析の勇者、一目でこれを見抜きましたか……ですが、もう遅い」
見隠しのマントと呼ばれる魔道具を少年は持ち上げると、彼は何を考えたのかその場でマントに火を灯す。貴重なはずの魔道具を燃やし始めた少年にレイナ達は驚くが、彼は淡々と告げた。
「どうせ逃げられないのであればこんな物を持っていても仕方がない……まあ、貴方なら簡単に同じ物を作り出せるのでしょうけど」
「くっ……」
「さあ、私を殺しなさい。死霊人形を相手に拷問など無意味な事は承知でしょう?」
「おのれ……何を考えておる!!」
死を覚悟したのか少年は抵抗する様子もなく、両腕を広げてレイナに攻撃を促す。その態度にカレハは不気味に思い、他の者達も警戒する。
死霊人形とはいえ、蘇った人間は意思があり、今度こそ浄化されればもう二度と蘇る事はない。それにも関わらずに少年は全く臆した様子もなく、それどころか挑発するように腕を広げた。
「さあ、殺せ!!魔王に連なる存在を殺す、それが勇者の役目でしょう!?」
「こいつ……」
「まだ何か奥の手を隠しているかもしれません!!迂闊に攻撃したら駄目ですよ!!」
少年の企みが読めず、レイナ達は迂闊に攻撃出来なかった。しかし、そんな彼等を見て少年はため息を吐き出すと、彼は何を考えたのか自分の腹に向けて右手を突き刺す。
「ふんっ!!」
「なっ!?」
「何て事を……!?」
「まさか、自害するつもりか!?」
自分の腹を貫いた少年の行動にレイナ達は唖然とするが、少年の方は笑みを浮かべ、直後に腹部から血液の代わりに闇属性の魔力が溢れ出る。そして少年が取り出したのは体内に隠しておいた魔石であった。
「どうですか?美しいでしょう……これほどの上等な魔石は滅多に手に入らない。何しろ本物の竜種の核の破片ですからね」
「核、じゃと!?しかも竜種の……」
「いけません!!すぐにあいつを止めてください!!」
「くそっ!?」
「もう、遅いっ!!」
体内に隠していた竜種の核を少年は振りかざすと、地面へ向けて投げ込もうとした。それを見たレイナは咄嗟にエクスカリバーを引き抜き、少年へ目掛けて突っ込む。
「はああっ!!」
「ぐはぁっ!?」
「や、やったか!?」
少年が竜種の核を叩き割る前にレイナのエクスカリバーが肉体を貫き、直後に聖属性の魔力が流し込まれ、少年の肉体に宿っていた闇属性の魔力が掻き消される。
かつては魔王を倒した事もあるエクスカリバーの攻撃を受けては少年も無事では済まず、握りしめていた竜種の核を手放し、地面に落ちてしまう。しかし、すぐにレイナは落ちた核を見て目を見開く。
「なっ……これは!?」
「……気付くのが、遅かった……ようですね」
「どうしたんだ!?」
レイナの態度と腹を剣で貫かれてもまだ完全には浄化していない少年は笑みを浮かべ、何事かとリル達は問い質すとレイナは答える。
「これ……竜種の核でも何でもない、マグマゴーレムの魔石の破片だ!!」
「えっ!?」
「ど、どういう事だ!?」
レイナは少年に近付いた時に解析を発動させ、地面に落ちた竜種の核を調べた。少年は竜種の核と称したが、実際はレイナが破壊したマグマゴーレムの核の破片である事が判明する。
どうやら腹に隠していたというのも嘘らしく、腹を貫く際に掌の中に隠し持っていたマグマゴーレムの破片を取り出して竜種の核と偽ったらしい。しかし、そのお陰で少年はレイナを引き寄せる事に成功した。
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