第766話 呪詛に侵された二人
「ふうっ……皆さん、無事ですか?」
「あ、ああ……何とかね」
「助かりました」
「流石は隊長だ!!もう勇者殿を越えたんじゃないのか!?」
「あはは……どうかな」
レイナがギガンを倒した事で他の者達は湧き上がり、特に白狼騎士団の者達は喜ぶ。一方でティナとリュコは役に立てなかった事を悔やみ、特に国を荒されたリュコからすればギガンを倒す事が出来なかったのが悔しくてならない。
「くっ……私にもっと力があれば」
「申し訳ございません、結局は足を引っ張ってしまい……」
「そんな事、気にしないでよ。それよりも……チイとネコミンは何処にいるの?シロとクロも見かけないけど」
「そうだった、二人は無事か!?」
リルはレイナの言葉を聞いて慌ててチイとネコミンの後を追いかける事にした。二人は戦闘の際中に影魔法で邪魔をしてきた者達を捕縛しようと別れたのだが、すぐにレイナ達も二人を探す。
ここでレイナは地図製作を発動させ、更に気配感知と魔力感知を発動させて周囲に存在する生物の位置を特定する。その結果、少し離れた所に4つの反応がある事に気付き、急いで場所を移動する。
「こっちの方に反応があります!!急ぎましょう!!」
「先に行ってくれ!!私達は後から追う!!」
「動ける者はレイナ殿に続け!!」
ギガンとの戦闘で負傷や披露した者も多く、彼等の治療のために全員では動けなかった。だが、比較的に軽傷な者達はレイナの後に続き、4つの反応がある場所に向かう。
(反応が4つ……という事は敵は逃げたのか?)
移動の際中にレイナは画面上に4つの反応しかない事に違和感を抱き、この地図製作の画面では仮に死霊人形のような存在でも表示されるはずだった。実際に始祖の魔王の時は地図製作でも反応が表示されており、仮に生物でなくとも魔力を発する存在ならば反応はあるはずだった。
だが、4つの反応しかないという事はチイ達と敵の人数を合わせると数が足りず、誰かが死んでしまった可能性もある。最悪の可能性を考えながらもレイナは急いで向かうと、そこには地面に倒れているチイとネコミン、それに寄り添うに伏せるシロとクロの姿が存在した。
「そんな……チイ、ネコミン!!」
「ば、馬鹿な……」
「返事をしてください!!お願いします!!」
「ぷるるんっ!?」
倒れている二人を見てレイナ達は慌てて駆けつけ、二人の身体を抱き上げようとした。だが、それに対して倒れていたシロとクロが目を開くと、鳴き声を上げる。
「ウォンッ!!」
「ガアアッ!!」
「うわっ……シロ、クロ!?」
「急にどうしたというだ!?落ち着け!!」
「……この反応、何かあるのか?」
シロとクロが身体をふらつかせながらもチイとネコミンの前を立つと、その様子を見てただ事ではないと察したリュコはレイナの肩を掴む。
「様子がおかしい、迂闊に近づかない方が良い」
「え、でも……」
「落ち着くのじゃ、レイナ殿……まずは二人の様子を確認しよう」
カレハの言葉を聞いてすぐにレイナは「解析」の能力を使用するように促されている事に気付き、その言葉に頷いてレイナは解析を発動させた。
チイとネコミンの身体を解析し、幸いにも視界に二人分の画面が表示された。これで彼女達がまだ生きている事が判明し、同時に二人の肉体の異変に気付く。
「何だ……これ!?」
「どうした!?何か分かったのか!?」
「二人の状態が……呪詛なっている!!」
「呪詛だと!?」
倒れ伏しているので分かりにくいが、現在のチイとネコミンは「呪詛」と呼ばれる状態に侵されており、衰弱状態であった。二人ともかなり危険な状態であると判断したレイナは迷わずに指を向けた。
「すぐに二人を治療します!!」
「待て、勇者殿……その前に敵は?敵は近くにいないのか!?」
レイナが治療を開始しようとすると、ここでカレハは敵の姿が見えない事に気付き、レイナも先ほどから敵の姿が見えない事には違和感を抱いていた。
気配感知も魔力感知も地図製作ですらも敵の姿は捉えられず、少なくともこの近くに敵はいない。だが、それならばどうして敵は二人を殺さずに放置したかであり、カレハは嫌な予感を浮かべる。
「敵はいったい何処に消えおった……」
「待ってください、二人の様子がおかしいです!!」
「何だって!?」
「ううっ……あああっ!?」
「うにゃっ……!?」
倒れているチイとネコミンが急に苦しみ出し、彼女達の皮膚が徐々に黒く変色していく。その様子を見てレイナは一刻の猶予もないと判断し、視界に表示された画面に両手を向けた。
「治療します!!」
「ま、待つのじゃレイナ殿……何か嫌な予感がする!!」
「くっ……待てません!!」
カレハは治療を開始しようとしたレイナを止めようとしたが、それを拒否してレイナは状態の項目を「呪詛」から「健康」へと書き換える。その瞬間、チイとネコミンの身体が光り輝き、彼女達は目を覚ます。
二人とも自分の身に起きた事に戸惑うような表情を浮かべるが、完全に呪詛は浄化され、元の二人に戻っていた。その様子を見たレイナは安堵する一方、他の者達も二人が起き上がった事に驚く。
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