第759話 マグマゴーレムの群体
「レイナ殿、来ますぞ!!」
「くっ……このぉっ!!」
『ゴガァアアアッ!!』
マグマゴーレムの群体は巨人の如く合体すると、レイナ達を押し潰そうと両腕を伸ばす。その行動を確認したレイナとカレハはデュランダルと芭蕉扇を振りかざし、衝撃波と竜巻を発生させて攻撃を防ぐ。
二人の放つ強烈な風圧によってマグマゴーレムの巨体は押し返されるが、どれだけ傷つけようとマグマゴーレムは再生し、致命傷を与えられない。そもそも巨人の様に見えるが実際の所は多数のマグマゴーレムが合体しているだけに過ぎず、解析の能力は当てにならない。
(こんな数の敵と戦うなんて思ってもいなかった……敵も俺の能力の事を把握しているのか)
竜種のような強大な力を持つ相手だろうとそれが生物ならばレイナの「解析」と「文字変換」の能力で従えさせることが出来る。だが、相手が複数の場合はその方法は通用せず、1体や2体を倒すかあるいは味方にしたところで状況は大して変わらない。
(何かいい方法はないのか!?文字変換でどうにかしないと……)
戦闘の際中もレイナは必死に頭を巡らせ、どのようにマグマゴーレムを倒すのかを考える。だが、そんな彼に対してカレハ肩を掴み、レイナに告げる。
「勇者殿……落ち着くんじゃ。焦った所で状況は変わらぬぞ」
「カレハさん……でも、早くどうにかしないと」
「だから焦っても仕方なかろう?窮地の時こそ冷静にならなければならんのだ」
「でも……」
「勇者殿、自分の力を信じるのだ。貴方には力がある、この程度の敵に負けるはずがない。そうでなければ勇者殿は既に死んでいるはず……自分を信じる事、それが重要じゃ」
このような状況下でもカレハは落ち着いており、彼女はレイナが負ける事など有り得ないと確信していた。そのカレハの言葉にレイナはどうしてそこまで自分を信じられるのかと思うが、ここで今までの戦いを思い出す。
始祖の魔王、海の魔王、地の魔王、他にも火竜などの強敵を倒してきたレイナは改めてマグマゴーレムの群体に振り返り、確かに今まで倒してきた相手と比べればどうという事はない存在に思えた。強敵である事は間違いないが、それでも不思議と先ほどよりもちっぽけな存在に思えた。
(そうだ……こんな奴等、今まで戦った奴等と比べたら大したことはない)
解析と文字変換の能力でどうにか切り抜けられないかと考えていたレイナだったが、ここで冷静に考えれば今の自分には心強い味方も存在し、聖剣も手にしている事を思い出す。
(落ち着け、こんな奴等は大したことはない……思い出すんだ、ゴーレムの弱点を)
水を浴びせればゴーレムの肉体は溶けてしまうが、そもそもマグマゴーレムの場合は他のゴーレムとは異なり、マグマのような肉体で構成されている。そんな存在に多少の水を浴びせても通用するのかと疑問は残る。
有効的なのは普通の水ではなく、水属性の魔法攻撃が通用しやすいだろう。だが、レイナの手持ちの武器には水属性の攻撃を行える聖剣は存在しない。ならば他の弱点を突いてマグマゴーレムを倒す手段を考えるしかない。
(ゴーレム……弱点は水……いや、それ以外にもあったはずだ。こいつらの弱点は……そうか!!)
レイナはゴーレムのもう一つの最大の弱点を思い出すと、瞼を閉じた。この時にレイナは瞼を閉じた状態で「魔力感知」の技能を発動させ、正確にマグマゴーレムが放つ魔力を感知する。
(ゴーレムの肉体を構成しているのは「核」だ。ゴーレムの核は上質な魔石だとリリスが言っていた……なら、核の位置を捉える事も出来るはず)
魔力感知に集中してレイナはマグマゴーレムの群体を把握し、敵の体内に存在する核の位置を把握する。その結果、多数の核を把握したレイナは目を見開くと、デュランダルを振りかざす。
「そこかぁっ!!」
「ゴガァッ!?」
「アガァッ!?」
「ゴアッ……!?」
『オアッ……!?』
レイナが衝撃波を放つと、巨人に合体していたマグマゴーレムの右腕の一部が剥がれ落ちると、数体のマグマゴーレムが引き剥がされて地面に墜落する。そのマグマゴーレムたちはレイナの放った衝撃波によって核を破壊され、地面に倒れるのと同時に溶けてしまう。
いくらゴーレムであろうと核を破壊されれば復活する事は出来ず、合体して巨人のように見せかけても実際には多数のマグマゴーレムが合わさっているだけに過ぎない。ならば着実にマグマゴーレムたちの核を破壊していけばやがては巨人として維持する事は出来ずに崩壊する。
「うおおおおっ!!」
「おおっ……その調子じゃ、レイナ殿!!」
『ゴアアアアッ……!?』
デュランダルを振りかざしながらレイナは的確にマグマゴーレム達の核を破壊するために衝撃波を放ち、次々と倒していく。その様子を見ていたカレハはレイナを守るため、芭蕉扇を振り払う。
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