第757話 火口

「うわ、道理で熱いはずですよ……こんな場所で噴火でもしたら流石に死にますね。あれ、火山?ここは火山だったのか?そんな話は聞いていなかったんですけど……」

「だが、何処からどう見ても火山ではないか」



リリスは火口の様子を見て不思議そうに首を傾げ、事前に聞いた話ではこの場所はドラゴンスレイヤーが祀られている鉱山だとは聞いていたが、火山という話は聞いていなかった。


しかし、実際に火口にはマグマが溢れている以上はこの場所が火山である事を示しており、否定しようがない。だが、リリスはこの場所が火山である事をどうして巨人国の人間が黙っていたのか気にかかる。



「ふむ……レイナさん、解析で奴等の手掛かりを探せますか?」

「今やってるんだけど……なんか、足跡を見つけたんだけどおかしいんだよ」

「おかしいとは?」

「それが……なんか、どっちも火口の方に向かってるみたい」



レイナは解析の能力を発動させて調べていると、どうやらギガンも少年の方も火口の方へ向けて移動している事が判明する。しかし、火口にはマグマが溢れているだけで二人の姿は見当たらない。


詳しく調べようにも熱のせいで迂闊に近づく事は出来ず、以前にレイナは「熱吸収」の能力を持ち合わせているので高熱に対しては強いが、他の者はそういうわけにはいかない。



「俺、ちょっと調べてくるよ」

「何!?駄目だ駄目だ!!お前ひとりを行かせて危険な目に遭ったらどうする!?」

「でも、俺以外にあの場所に近付ける人なんて……」

「……待て、あのマグマ……何やら様子がおかしくないか?」



リュコの言葉に全員がマグマに視線を向けると、マグマが徐々に一か所に集まり始めていく。その様子を見てレイナは嫌な予感を浮かべ、即座に解析を発動させてマグマの様子を伺う。



(まさか……解析!!)



火口のマグマに対してレイナは解析を発動させると、ここで視界には詳細画面が表示され、即座に内容を確認したレイナは全員に注意した。



「皆、下がって!!あれはマグマなんかじゃない、ゴーレムだ!!」

「ゴーレム……だと!?」

「まさか……マグマゴーレムか!?」



オウソウの驚愕の声が響き渡り、かつてレイナ達は巨塔の大迷宮にて「マグマゴーレム」なるゴーレム亜種と対決した事がある。しかし、彼等が対峙した個体はロックゴーレムと同程度の大きさだったが、今回の場合はゴーレムキング級の大きさを誇る。


火山の火口だと思われていた場所は実はマグマに擬態していたマグマゴーレムである事が発覚すると、巨大なマグマゴーレムはレイナ達に向けて口を開き、火炎を吐き出す。



『ゴガァアアアアッ!!』

「炎!?」

「まさか、吐息ブレスか!?」

「いかん!!皆、下がるのじゃ!!」



カレハが前に出ると彼女は芭蕉扇を振りかざし、竜巻を発生させてマグマゴーレムが放つ火炎放射を散らす。竜巻によってレイナ達を炎から守ろうとするが、マグマゴーレムは火竜の吐息の如く炎を吐き出し、止まる様子がない。



「ゴガァアアアッ……!!」

「ぬうっ……!?」

「ぞ、族長!!我々も援護します!!」

「皆、族長に続け!!」

「風の精霊よ、力を貸してくれ!!」



カレハの周りに他の戦士達も集まり、風の精霊魔法で彼女の援護を行う。より一層に竜巻が巨大化してマグマゴーレムの火炎放射を掻き消すが、マグマゴーレムの方も全身を火炎の勢いを強化させる。



「アガァアアアアッ……!!」

「ぐぐぐっ……何という力じゃ!?」

「くっ……皆、伏せてっ!!」



ここでレイナはデュランダルを引き抜くと、フラガラッハを装備した状態で刀身を振動させ、強烈な衝撃波を生み出す。フラガラッハの攻撃力9倍増の効果も加わり、強烈な衝撃波がマグマゴーレムの火炎放射を押し退けて顔面を吹き飛ばす。


並のゴーレムならば一撃で粉砕する程の威力ではあったが、マグマゴーレムは顔面を吹き飛ばされても倒れる様子がなく、それどころか吹き飛ばされた箇所が地面に落ちた途端に本体の元へと戻って吸収される。



「……ゴガァアアアッ!!」

「再生した!?」

「しかも尋常じゃない速度ですよ!?何なんですかこいつ!?」

「くっ……核を壊さぬ限りはどうしようもないのか」



マグマゴーレムは瞬時に再生を果たす光景を見てレイナ達は動揺を隠せず、マグマゴーレムの体内の何処かに存在する核を破壊しない限り、倒す事は出来ない。だが、核を破壊するにしてもゴーレムキング級の大きさを誇る。


相手がマグマで構成された存在である事も厄介であり、肉体を破壊したとしてもすぐに集まって再生し、熱に耐性がある者しか近づけない。熱吸収を持つレイナならば問題はないが、他の者は生憎とそんな都合のよい力を持ち合わせてはいない。

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