第752話 魔剣カグツチの力
「アクアレイザー!!」
「くぅっ……うわぁあああっ!?」
「うおおっ!?」
「す、凄い……!!」
ヒナが構えた杖先から青色の魔法陣から大量の水が放たれ、まるで光線のようにシュンへと襲い掛かる。シュンの身体は壁際まで吹き飛ばされ、意識を失ったのか動かなくなった。
シュンが壁際まで吹き飛ばされたのを確認すると、ヒナは魔法を解除する。この際にアリシアはシュンが意識を失っているのかを確認するために恐る恐る近付くと、彼は壁際に叩きつけられた際に気絶したらしく、動く様子がない。
「……気絶しているようですね」
「そ、そうか……くそ、この馬鹿。本気で俺達を殺そうとしやがって」
「よ、良かったよ〜……ごめんね、シュン君」
3人は気絶しているシュンの元へと集まり、完全に気絶している彼を見て安堵する。だが、問題はまだ残っており、今のうちにシュンを拘束する必要があった。
「シュン様がどうしてこのような凶行を実行したのかは分かりませんが……先ほど、私達を襲った女性と何らかの関りを持っていたようです」
「その事なんだけどよ……あの女、俺何処かで見たような覚えがあるんだ」
「あ、実は私も……」
「本当ですか!?」
シゲルとヒナは先ほどアリシアに討たれた女性に心当たりがあり、はっきりとは思い出せないが最近に二人は女性の顔を見た覚えがあった。何時何処で出会ったのかを思い出そうとすると、二人は前にシュンを捜索していた時に占ってもらった女性だと思い出す。
「そうだ、あの時の占い師だ!!」
「そうだよ!!あの時の人だよね!?」
「占い師?それはどういう……」
占い師という言葉にアリシアは不思議に思い、二人に女性の正体を尋ねようとした時、ここで彼女が手にしていた聖剣フラガラッハに異変が起きた。まるで主人に危険を知らせるかの如く、唐突に刃が震え始めた。
違和感を抱いたアリシアは気絶しているシュンに視線を向けると、彼が壁に吹き飛ばされた時に手放していた魔剣が震え出している事に気付き、アリシアは目を見開く。
(魔剣が反応している!?まさか、まだ意識が……!?)
魔剣が動いている事からシュンの意識が残っているのかと思ったアリシアは身構えるが、完全にシュンは気絶していた。それにも関わらずに魔剣が震えている事にアリシアは疑問を抱き、直後に魔剣に関わる伝承を思い出す。
(魔剣の中には製作者の魂が宿り、まるで生きている人間のように意思を持つ魔剣が存在すると前に御爺様が……まさか!?)
亡き祖父から魔剣の事を教えてもらったアリシアは魔剣カグツチに視線を向け、シュンが狂った理由は魔剣にあるのではないかと考えた彼女は聖剣を振り下ろす。シュンの手に触れる前に魔剣を叩き割ろうとしたが、それに対して地面に横たわる魔剣は勝手に動いてシュンの手元へと移る。
「がああっ!!」
「くぅっ!?」
「何だとっ!?」
「えっ!?」
シュンは獣のような咆哮を放ちながら起き上がると、アリシアが振り下ろした剣の刃を弾き返し、それを見ていたシゲルとヒナは驚く。完全に気絶していたと思われたシュンは起き上がると、彼は虚ろな瞳で3人を見つめ、その異様な雰囲気に他の3人は気圧される。
完全にシュンは意識を失っていたにも関わらず、魔剣を手にした瞬間にまるで取り付かれたように身体が動き出し、魔剣から黒炎が再び発火した。その様子を見てアリシアはシュンが操られていると判断し、彼女は聖剣を構えた。
「そういう事でしたか……どうやらシュン様は魔剣に憑依していた悪霊に取り付かれたようです!!」
「あ、悪霊だと!?そんなのがいるのか!?」
「ど、どうすればいいの!?」
「聖属性の魔法で浄化するか、あるいは魔剣を破壊するしかありません!!」
「ぐううっ……ああっ!!」
魔剣に取り付いていた「死霊」が気絶したシュンの肉体に乗り移り、現在のシュンは正気を失ったように剣を振り回す。その攻撃に対してシゲルとヒナは慌てて離れると、アリシアは聖剣を振り下ろす。
「はああっ!!」
「ぐぎぃっ!!」
金属音が鳴り響き、聖剣と魔剣の刃が接触すると地面に振動が伝わり、鍔迫り合いの状態へと陥る。攻撃力3倍増の効果を持つ聖剣フラガラッハだが、アリシアは渾身の力を込めているのにシュンはびくともせず、それどころか逆に押し返す。
「がああああっ!!」
「くぅっ!?そ、そんな……!?」
アリシアは聖剣を所持した状態にも関わらずに力負けし、後方へと追い込まれていく。どうやら現在のシュンはアリシアを大きく上回るステータスを身に付けているらしく、彼女の力では到底抑えきれなかった。
勇者であるシュンは常人とは比べ物にならないステータスの高さを誇り、更に彼の場合は連日に魔物を狩り続けた事により、レベルが上昇していた。今ではレベルが70近くまで存在し、更に魔剣に憑依された事により、肉体の負荷を無視して力を引き出される。
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