第742話 地の魔王のその後
「まあ、馬鹿王子は放っておくとして……例の甲冑の巨人、名前は確かギガンと呼ばれているそうですが、そのギガンと少年の行方はまだ分からないんですか?」
「申し訳ない……城中を捜索したが、見つからない。そもそも奴等は普段から何処から現れているのかも分からぬ」
「え?それはどういう意味ですか?アントンは客人としてもてなしていたんじゃないですか?」
「確かにアントン王子は奴等を客人として迎え入れていた。だが、奴等は用事がある時にしか姿を見せない。何度か奴等の行動を把握しようと兵士に見張らせていた事もあるが、何時の間にかすぐに姿を消してしまった」
「……それは気になりますね」
この城でギガンと少年を見かけた者の証言によると、二人は普段はどのように行動しているのかも分からず、基本的にはアントンが危機を迎えた時に現れるか、あちらの方から用事がある時にしか姿を現さないという。
何度かダイゴロウは城中の兵士に命じて二人が何処に消えたのかを探し回らせたが、結局は見つかる事はなく、どれほど注意深く観察していても一瞬で姿を消してしまうらしい。その話を聞いたリリスは腕を組み、不意にケモノ王国でギガンが現れた時に同行していたという黒マントの人物を思い出す。
「そういえば巨塔の大迷宮からギガンが現れる時、もう一人全身を覆い隠した存在がいましたよね。それがもしかしたらこの国に現れた少年かもしれません」
「だが、そもそも何者だ?外見が少年という事は子供が魔王軍に属しているというのか?」
「ふむ、容姿を聞く限りではエルフではないようだが……ただの人間の子供が魔王軍に属するとは思えぬな」
少年の容姿を聞く限りでは人間のようではあるが、子供が魔王軍に属している事が気にかかる。もしかしたら何らかの方法で姿を偽装している可能性もあるが、今は一刻も早く見つけ出して捕まえる必要があった。
「ギガン……我が国だけではなく、この国をめちゃくちゃにした責任は取ってもらうぞ」
「話を聞く限りだと相当にやばそうや奴等ですね。下手をしたら私達が倒した始祖の魔王の配下よりも強いかも……」
「大丈夫さ、こっちには勇者もいる。それにレイナ君だっているしな」
「あ、はい。頑張ります」
ギガンの強さは数十名の巨人でも相手にならない強さを誇るが、今までに様々な強敵を倒してきたレイナよりも強いとは思えない。ケモノ王国から姿を消したギガンの手掛かりを掴めた以上、この機を逃さずに見つけ出して捕える必要があった。
「そういえば捕まえると言えば……地の魔王の件もどうにかしないといけませんね」
「あ、そういえばリリスに任せていたけど……結局、地の魔王はどうしたの?」
「ああ、そういえば説明してませんでしたね。ほら、ここにいますよ」
「……瓶?」
レイナが倒した地の魔王は現在はリリスが管理しており、彼女は自分の鞄に手を伸ばすと、水晶製の瓶を取り出して中身を見せる。その中には砂が入っており、それを見たレイナ達は不思議に思う。
砂が入った水晶製の瓶をリリスは振り回すと、内部に入っていた砂が唐突に人の形へと変化すると、苦しげな声を漏らす。
『ヤ、ヤメロ!!』
「うわっ!?しゃ、喋った!?」
「何だこれは!?まさか、また変な実験をして人語が喋るゴーレムでも作り出したのか!?」
「違いますよ!!これが地の魔王です!!」
「え、これが……?」
レイナ達は驚いて瓶の中を覗き込むと、依然と比べれば随分と小柄になった地の魔王の姿が存在し、砂人形の状態で地の魔王は瓶に拳を叩きつける。
『ココカラダセ!!ニンゲンドモガッ!!』
「はいはい、そんな姿で怒鳴られても怖くも何ともありませんよ」
「こ、これが地の魔王……なのか?」
「ちょっと可愛い」
「ぷるぷるっ(弱そう)」
小瓶の中に閉じ込められる程に縮小化した地の魔王にレイナ達は戸惑うが、リリスは瓶をむちゃくちゃに振り回すと瓶の中に閉じ込められた地の魔王は悲鳴を上げた。
「ほらほら、あんまり生意気な口を利くとお仕置きしますよ。また水を中に注ぎ込みましょうか!?」
『ヒイイッ!!ヤ、ヤメロ!!』
「リリス、可哀想だよ……」
「何言ってるんですか、いくら外見が小さくなってもこいつのせいでこの国の人たちの先祖は苦しめられたんですよ。こいつの行った事を考えればまだあそこに倒れている男の方が罪は軽いんですよ」
「それはそうかもしれないけどさ……」
小瓶の中で地の魔王は身体が崩れる程に振り回され、その様子を見兼ねてレイナは止めるが、リリスは悪びれもせずに質問を行う。
「ほら、貴方を復活させた存在の事をいい加減に話してください。もしも話さなかったら今度こそ浄化しますよ」
『ク、クソッ……ハナシタトコロデ、オレヲシマツスルツモリダロウ!?』
「ふむ、言葉が聞き取りにくいのう……どれ、リリス殿。それを貸して下さらぬか?」
「え?いいですけど……」
カレハはリリスから小瓶を受け取ると、彼女は何事か考え込むように腕を組み、やがて蓋を外す。その行為に全員が驚くが、カレハは掌を翳すと、小瓶の中に変化が訪れた。
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