第727話 巨人国ギガン

――砂漠を越え、遂にレア達は巨人国へと辿り着く。ちなみに前回の襲撃の件もあり、今回はレア達だけではなく、他の面子も同行させて国へ辿り着く。同行に加わったのはチイとネコミンであり、白狼騎士団の面々も加わる。


巨人国は砂漠を越えた先に存在し、万里の頂上を想像させる巨大な城壁に取り囲まれた国だった。この城壁はかつて巨人国を作り上げた者達が作り上げた防壁であり、ここを越えれば巨人国の領地であった。



「壁の中に暮らす巨人ですか……どこかで聞いた様な話ですね」

「危ない事を言うのを止めてよ」

「何の話をしてるんだお前達は……」

「……砂漠を越えたのにここも結構暑い」



レア達は巨人国の国境へと到達し、城壁の前に移動するとすぐに巨人族の兵士が応対を行う。流石に巨人の国というだけはあって兵士達は全員が巨人族で統一され、その迫力に圧倒されてしまう。



「待て!!お前達は何者だ!?どこから来た!!」

「我々はケモノ王国の使者だ!!私は白狼騎士団の団長のチイ、そしてここにおられる御方が勇者レア殿だ!!」

「ゆ、勇者だと!?」

「あれが噂に聞く……」

「本当にただの子供にしか見えないじゃないか……」



勇者という言葉に巨人族の兵士達は動揺し、特にレアの外見を見た者は信じられない表情を浮かべる。そんな彼等の反応に対してレアは動じる風もなく、こんな反応は慣れていた。


初対面の人間の中でレアが勇者である事を信じたのは森の民の族長のカレハぐらいであり、大抵の人間はレアの姿を見ても勇者とは信じない。だが、そんな輩にはレアは勇者の証である事を示すため、聖剣デュランダルを掲げた。



「これを見てください!!海底王国のセリーヌ女王から授かった聖剣です!!」

「せ、聖剣だと!?」

「おおっ……あの色合い、それに形状、正しく伝承通りの伝説の聖剣だ!!」

「まさか、本物なのか!?」



聖剣の存在は巨人国でも有名らしく、聖剣デュランダルを目にした巨人族の兵士はレアが本物であると判断し、すぐに城門の警備を行う隊長らしき男性が駆けつける。



「これは失礼しました!!勇者殿が来られる事は我々も聞いております、ですがこんなにも早く辿り着くとは……」

「リル女王様は巨人国とは前々から交流を行いたいと思い、ここへ訪れた。ここを通して巨人国の王と謁見させてほしいのだが……」

「そ、それがですな……」



チイの言葉に兵士達は何とも言えない表情を浮かべ、その反応にレア達は戸惑うと、隊長は意を決したように現在の国の内情を告げた。



「悪い事は言いません、今すぐに貴方達は王国へ引き返した方がいい」

「引き返せ、だと!?いったい何を言っている、そちらが呼び出したんじゃないのか!?」

「どういう意味だ!?」

「話が違うぞ!!」

「騒ぐな、お前達!!」



引き返せという言葉に同行していた白狼騎士団の面々が信じられない表情を浮かべ、騒ぎ出す。それをチイが制すると隊長に対してどうして引き返せというのかを問い質す。



「引き返せとはどういう意味ですか?我々はそちらの要望に応えるために訪れたのだぞ。ここまで来るのにもそれなりの時間と費用も掛かった。それなのにここまで来て引き返せなんて……」

「道中の御苦労はお察しします。しかし、ここで貴方達を通すわけにはいかないのです……」

「だから、その理由を聞いている!!」

「……実は先日、国王様がお亡くなりになられました」

「な、何だと……国王が!?」



巨人国の国王が既に死亡しているという話を聞いてレア達は驚き、最初に同盟を提案したのは巨人国の国王である。その発案者が死亡したと聞かされて動揺せずにはいられない。


時期的には王国に派遣された使者が辿り着いた時には巨人国の国王は既に死亡したらしく、その原因というのが病らしい。彼は難病を患っており、残念ながら半年前から薬剤師に余命を宣告されていた事は民衆にも知れ渡っていた。



「国王陛下は亡くなられる前にこの国のため、今後は帝国以外の国々とも交流を行おうとしておられました。そこで今まで接点がなかったケモノ王国と同盟を結び、本格的な交流を行おうとした時にお亡くなりになられて……」

「そういう事だったのか……だが、国王が亡くなられたのならば両国の同盟の件はどうなる?」

「それが実は新しく国王に即位した御方……先代の国王の息子であるアントン様はケモノ王国との同盟を結ぶつもりはないとはっきりと宣言されました」

「何だと!?それでは話が違うじゃないか!!」

「申し訳ありません、しかし我々も国王様の言葉には逆らえません……」



同盟を申し込んできた先代の国王は急逝し、更に後を継いだ新たな国王は同盟を拒絶した事により、国境の守護を任されている兵士達はレア達を通せないという。あまりにも理不尽な対応にチイは憤るが、兵士達も新しい国王の命令には逆らえないらしい。

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