第721話 黒幕の正体
「レア様、無事ですか!?」
「敵は倒したんですか!?」
レアが地の魔王を追い詰めると、遅れてリリスとティナも彼の元へ辿り着き、倒れている泥人形の姿を見て驚く。だが、レアの方はデュランダルを構えたまま泥人形を見下ろし、状況を説明する。
「こいつが地の魔王だよ、海の魔王と同じく死霊石を使って復活したみたい」
「死霊石、ですか……なるほど、ゴーレムの核の様に他の物体を取り込んで肉体を形成していたんですね」
「こ、これが地の魔王……!?」
リリスはレアの説明を聞いて納得するが、ティナの方は倒れ込んだ泥人形が地の魔王だと知って戸惑う。一方で地の魔王の方は悔し気な声を漏らす。
『アアッ……ヤメロ、ミルナ……ソンナメデミルナァッ!!』
「動くな……動けば死霊石を破壊するぞ」
『グウッ!?』
「とりあえず、逃げられないようにする必要がありますね……このままだと泥が崩れて地中に逃げ込まれでもしたら面倒ですからね」
『ヤメロ、フレルナ!?ニンゲンゴトキガッ……!!』
泥人形の身体が崩れかけている事を知ったリリスは胸元の部分に露出した死霊石に視線を向け、とりあえずは頭の部分を掴み、持ち上げる。その行為に地の魔王は悔し気な声を漏らす。
地の魔王を持ち上げたリリスは逃げられないようにするため、適当な道具を探し出す。色々と考えた結果、彼女は自分が持って来たリュックの中に入れる事にした。
「しばらくの間はこの中に入れましょう」
『ナ、ナニヲスル!?ハナセ、ハナサンカッ!!』
「だ、大丈夫ですか?破って逃げたりするんじゃ……」
「平気ですよ、このリュックもレアさんの能力で改竄して貰いましたからね。この中に放り込めば自力で出てくる事は出来ません」
リリスのリュックは事前にレアの文字変換の能力で「どんな荷物」も収納できるようにしているため、中の方は異空間に繋がっているように一度入れてしまえば内部から抜け出す事は出来ない。
地の魔王は散々悪態を吐き散らしながらもリュックの中に納まると、その様子を確認してレア達は安堵する。だが、問題はまだ残っていた。
「うぉおおおんっ!!俺達の船が……」
「つ、積荷がぁっ……!!」
「もう、おしまいだ……俺達は砂漠の魔物の餌になるんだぁっ……」
「落ち着け……あたし達はまだ生きている、希望は捨てるな」
地の魔王によって横転した砂船の前に船長と船員は集まり、嘆き悲しむ。そんな彼等にリュコは困ったように慰めるが、この砂漠で乗り物も無しに移動するのは自殺行為に等しい。
砂船がなければこの広大な砂漠を徒歩で移動しなければならず、しかも水も食料も船の中に取り残されてしまった。回収するにしても砂船がなければ移動もままならず、船長達は嘆き悲しんでいるとここでリリスが溜息を吐き出す。
「しょうがありませんね、レアさん」
「分かったよ……皆さん、落ち着いて下さい。船の方は俺がどうにかします」
「どうにかするだと!?あんたに何が出来るんだ!?見ろ、この船の有様を……横転した時に船底が割れちまったんだ!!仮に起き上げる事が出来たって使い物にならねえんだぞ!?」
船長は船を指差し、横転した際にぱっくりと割れてしまった船底を指差す。仮に何らかの方法で船を立ち上げてもどうしようも出来ず、この砂船はもう二度と動く事はない。船長と船員からすれば船を失うのは家を失うのと同義である。
砂船で生活する事が当たり前だった彼等からすればこの砂船は只の乗り物ではなく、我が家に等しい存在でもある。だが、いくら嘆いても砂船が直る事はなく、どうしようもないかと思われた時、ここでレアは船長に告げた。
「じゃあ、修理して船を持ち上げる事ができたらいいんですね?」
「ああっ!?やれるもんならやってみろ!!こんなぱっくり割れた船をあんたに直せるのか?」
「ちょっと待ってくださいね……うん、何とかなりそうです」
「えっ……?」
レアは壊れた船に視線を向け、解析の能力を発動させると視界に詳細画面が表示され、直せる事が判明した。砂船の状態は「破損」と表示されており、これを「正常」という文字に書き換えると、次の瞬間に船が光り輝く。
「うおおっ!?」
「な、何だぁっ!?」
「これは……まさかっ!?」
「……はい、直りましたよ」
船が光り輝いたと思った瞬間、砂船の船底が元通りに繋がり、壊れる前の状態へと戻る。その光景を目にした船長と船員は度肝を抜かすが、この後に彼等は更に驚かされる。
「あとは船を戻すとしたら……よし、皆も手伝って」
「手伝う?」
「私達も?」
「ぷるんっ?」
「何をするつもりだ?」
レアに呼びかけられた者達はは彼が何をするつもりなのかを問うと、彼はとんでもない提案を告げた。
「皆でこの船を引っ張って元通りにするんだよ。人数が足りなかったら、転移台から人を呼ぶから」
『……えっ?』
そのとんでもない発言に全員が呆気にとられたが、レアは人海戦術で砂船を起き上げる事を告げた――
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