第719話 クロミン大活躍
「くそっ……どうすればいいんだ!?」
「いくらでかくなろうと、ゴーレムなら水を浴びれば倒せるはずです!!雨を降らせる以外に何か方法を探さないと……」
「方法と言われても、ここは砂漠だぞ!?水などあるはずが……」
「水……そうだ!?クロミン!!」
「ぷるんっ?」
何か思いついたのかリリスはクロミンに視線を向け、彼女は自分の荷物の中を探り、魔石を取り出す。それは普段から彼女が携帯している物であり、様々な事態に対応できるようにリリスは普段から色々な魔石を持ち歩いていた。
リリスが取り出したのは水属性の魔石であり、それをクロミンの口の中に突っ込む。突如として口に水属性の魔石を飲み込まされたクロミンは戸惑うが、リリスはティナとリュコに声をかける。
「ほら、二人とも!!クロミンを支えるのを手伝ってください!!」
「支える?」
「ど、どういう意味ですか?」
「説明している暇はありませんよ!!ほら、早くしないとクロミンが破裂しますよ!!」
「ぷるんっ!?(破裂!?)」
水属性の魔石を飲み込んだクロミンは体内で魔石が小さくなっていき、それに比例するようにクロミンの身体が大きくなっていく。スライムは水分を吸収すると巨大化する性質を持つが、水属性の魔石から放たれる魔力によってクロミンは膨れ上がる。
「レアさん、もう少しだけ時間を稼いでください!!」
「時間……分かった!!」
『ゴガァッ!?』
リリスはレアに呼びかけると、その言葉を聞いてレアはすぐに頷き、リリスが何か手を打つつもりだと信じてサンドゴーレムの注意を引く。その間にもリリスは水属性の魔石をクロミンの口の中に押し込む。
「ほらほら、もっと食べて!!もっとおっきくなるんです!!」
「ぷるるんっ……!?」
「リ、リリスさん!!いったい何を……」
「どんどんとスライムが大きくなっていくぞ!?」
「あ、あんたら何をしてたんだ!?こんな時に!?」
「貴方達もぼさっとしてないでささえるのを手伝ってください!!死にたくないなら一緒に支えて!!」
「俺達も!?」
どんどんと巨大化していくクロミンをリリス達では抑えきれず、砂船から逃げてきた船長と船員たちも手伝わせ、全員で巨大化するクロミンを支える。やがて限界が訪れたのか、クロミンは苦しそうに呻き声を上げる。
「ぷるるるっ……!!」
「リリスさん、クロミンが苦しそうなのですが……!?」
「もうそろそろですね……レアさん、今からサンドゴーレムの身体に水をぶっかけます!!その瞬間に攻撃を叩き込んでください!!」
「っ……分かった!!」
『ゴガァアアアッ!!』
リリスの言葉にレアはデュランダルを横向きに構えると、ここでサンドゴーレムは危険を察したのか標的を切り替え、クロミンを支えている者達に攻撃を繰り出そうとした。
だが、それを予測していた様にリリスはクロミンを動かし、サンドゴーレムと向かい合うように顔を向けさせる。そして彼女はクロミンに命令した。
「クロミン!!みずてっぽーです!!」
「ぷるっしゃあああああっ!!」
『うわぁっ!?』
クロミンの口内から大量の水が一気に放出され、サンドゴーレムの肉体へ向けて放たれる。その際にあまりの勢いにクロミンを抱えた者達に衝撃が走るが、どうにか全員掛かりで抑え付ける。
『オァアアアアッ!?』
「やった!!今ですよ、レアさん!!」
「分かってる!!」
サンドゴーレムはクロミンの口元から放たれた大量の水を浴びてしまい、全身の砂が変色して泥のように崩れ落ちていく。その様子を確認したレアは体内に封じられているキングには悪いと思いながらも、大剣を振りかざす。
身体を一回転させ、更に勢いを増した一撃を繰り出す。これは剣士が扱う「回転」と呼ばれる戦技を模倣した動きであり、レアはデュランダルの刃から強烈な衝撃波を放つ。
「喰らぇええええっ!!」
『オガァアアアアッ……!?』
横一文字に放たれた衝撃波がサンドゴーレムの胴体へ的中すると、水を浴びて身体が泥の様に固まったサンドゴーレムの肉体が崩れ去り、地面に散らばる。その直後に水分を吐き切ったクロミンは元の大きさまで縮まり、目元をぐるぐるとさせながら鳴き声を上げる。
「ぷるるっ……(さ、流石にきつかった)」
「よくやりましたねクロミン!!今日の晩御飯は上級回復薬ですよ!!」
「な、なるほど……スライムの性質を利用して水属性の魔石から得た水分を吐き出させたのか……」
「確かにスライムならば水属性の魔力を水分に変換させ、吐き出す事が出来るとは聞いた事がありますが……まさか、これほどとは思いませんでした」
「た、大したスライムだな……最もこんな作戦を思いつく嬢ちゃんも凄いが」
咄嗟にスライムの性質を思い出し、それを利用したリリスに全員が呆れを通り越して感心するが、その一方でレアの方はサンドゴーレムを本当に倒したのかを確認するために近付く。
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